2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23791167
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
大河原 剛 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20469034)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自閉症 |
Research Abstract |
これまでに私が所属する研究室では、妊娠ラットにサリドマイドを投与することにより発症させた自閉症モデルラットにおいて、自閉症の特徴であるセロトニン系の異常、セロトニン神経の起始核である縫線核の異常や行動異常が起こることを明らかにしている。本研究では、この自閉症モデルラットを用い、未だ未解決の課題に関して、生化学的、形態学的、行動学的な解析を行い、ヒト自閉症の発症メカニズム解明の基礎とする。平成23年度の研究では、妊娠9日目、10日目のWistarラットに500mg/kg のサリドマイドを経口投与し、生まれてきたラットの解析を生後50日目に行った。生後50日目のラットを麻酔し、取り出した小脳を4% パラフォルムアルデヒドで固定した後に、15%、20%、30%のスクロースで置換を行った。その後、OCTコンパウンドに包埋し、18μmの厚さで凍結切片の作成を行った。作成した切片は、Purkinje細胞を可視化するために抗Calbindin D28k抗体で染色を行った。その結果、サリドマイド投与群(n=5)では、コントロール群(n=8)に比べ、Purkinje細胞層の長さあたりのPurkinje細胞の数が有意に減少していることが明らかとなった(サリドマイド投与群:17.42±0.62 個/mm, コントロール群:19.44±0.78個/mm)。自閉症患者の中には、運動失調をきたす例が報告されており、我々の自閉症モデルラットにおいて運動中枢である小脳の異常が見られたことは、自閉症患者の運動失調の原因を考えるうえで大変興味深い。今後、我々の自閉症モデルラットで得られた成果が、人の自閉症研究に還元されることで、新たな診断方法の開発や新たな治療方法の開発に役立つ可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私の所属する研究室では、これまでにサリドマイドを用いた自閉症モデルラットにおいて、セロトニン系の異常や行動異常が起こっていることを明らかにしている。本研究では、所属する研究室で新たに開発された自閉症モデルラットを用い、未だ未解決の課題であるセロトニン以外のモノアミン(ドーパミン、ノルアドレナリン)、脳の形態、社会行動に異常が見られないか明らかにすることを目的とする。平成23年度の研究では、自閉症モデルラットにおいて、形態学的な解析を行い、運動中枢である小脳に異常があることを明らかにした。形態学的な詳細な解析は、平成24年度以降に行う予定であったが、計画を前倒しして解析を行った。その結果、自閉症モデルラットの小脳においてPurkinje細胞層の長さあたりのPurkinje細胞の数が有意に減少していることを明らかにした。本来、平成23年度に行う予定の生化学的な解析は、形態学的な解析を優先させたため、平成24年度以降に行うこととする。このように本研究は、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究では、自閉症モデルラットにおいて、運動中枢である小脳に形態学的な異常があることを明らかにした。本研究の目的は、我々が開発した自閉症モデルラットを用い、未解決の課題を形態学的、生化学的、行動学的に明らかにすることであり、後者2つに関しては未解決のままである。今後は、これらの未解決な課題を解明する所存である。具体的には、以下の2点を明らかにする。(1)自閉症モデルラットと対象ラットの脳(線条体、側坐核、海馬、大脳皮質)を取り出し、HPLCによりドーパミンとノルアドレナリンの濃度を測定し、自閉症モデルラットと対象ラットの間に違いが見られないのか調べる。さらに、サリドマイド投与による自閉症モデルラットにおいて血中オキシトシン濃度に変化が見られないのかELISAにより解析する。(2)Fileらの方法に基づき、2匹の雄ラット(薬剤投与群と対照群を1匹ずつ、または対照群を2匹)をテスト用のケージにいれ、2匹の間の社会的関係を形成するための行動を観察することで、薬剤投与群と対照群の間に社会相互作用に違いが見られないのか明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
妊娠ラットの購入代金として40万円を、その飼料代として5万円を計上する。また生化学実験として、ELISAとHPLCを用いた解析を行う必要があり、その試薬代として30万円を計上する。行動学的実験には、マイクロダイアリシスに必要な消耗品があり、その経費として55万円を計上する。
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