2011 Fiscal Year Annual Research Report
疾患特異的iPS細胞を用いた細網異形成症の病態解析
Project/Area Number |
23791169
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大嶋 宏一 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (60525377)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 細網異形成症 / Adenylate kinase2 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に樹立した2名の細網異形成症患者由来のiPS細胞を用いて、Tリンパ球の分化系を構築し、患者ではCD5+CD7+の段階で成熟が停止していることを見いだした。また患者由来のiPS細胞では、CD34+KDR+という血球分化の早期の段階の前駆細胞は減少せず、CD34+CD43+という後の段階で著しく減少しており、CD34+KDR+細胞を用いた造血コロニーアッセイでも著しい造血能低下を確認できた。一方、原因遺伝子であるAK2を患者細胞に強制発現させると上記の造血能低下は回復した。AK2がミトコンドリアに局在していること、代謝に関連していることから、患者由来のiPS細胞およびiPS細胞から分化させた血球でミトコンドリアの形態および機能評価、そして代謝について調べた。その結果、iPS細胞および分化した血球前駆細胞の両方で、AK2を欠損している場合、ミトコンドリアが小さく、未熟な形態をとっていた。また、蛍光共鳴エネルギー移動 (fluorescent resonance energy transfer, FRET)を応用した分子プローブを用いて、ミトコンドリア、核および細胞質内のATPレベルを評価したところ、iPS細胞由来の血球前駆細胞の細胞質ではAK2の有無で顕著な差は認めなかったが、AK2を欠損している場合ミトコンドリアのATPレベルが上昇し、核では低下していることが突き止められた。つまり、AK2が欠損しているとミトコンドリアで合成されたATPが効率よくミトコンドリア外へ運搬されず、エネルギー消費が大きい細胞内器官である核へのATP運搬が損なわれていると考えられた。本研究によって、これまで不明であった病態の多くが解明され、ヒトにおけるAK2の新たな機能が明らかになっただけでなく、ヒトの血球分化におけるエネルギー代謝の重要性を初めて示すことができた。現在、論文執筆中である。
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