2011 Fiscal Year Research-status Report
スプライシング可視化神経芽腫細胞を用いた脊髄性筋萎縮症治療法の開発
Project/Area Number |
23791175
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森川 悟 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50457074)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | スプライシング可視化 / オーバーラップPCR / ルシフェラーゼ |
Research Abstract |
脊髄性筋萎縮症(Spinal muscular atrophy: SMA)は脊髄前核細胞の変性に起因した神経筋疾患で、常染色体劣性遺伝形式をとる最も頻度の高い運動ニューロン病である。原因遺伝子としてSMN1遺伝子が同定されており、95%以上にSMN1遺伝子の欠失を認めている。SMN1遺伝子の存在する5q13.1領域には同じ蛋白をコードするSMN2遺伝子が存在する。しかし、SMN2遺伝子はエクソン7に1塩基の違いを認め、これによりエクソン内スプライシング促進因子 が阻害され、スプライシング異常が起こり、SMN2遺伝子は機能的な全長型SMN蛋白をほとんど作れない。 現在、SMN2遺伝子エクソン7のスプライシング異常を修正し、全長型SMN2 mRNAを増加させる試みが盛んに行われている。しかしながら、SMAの主病態は脊髄前核細胞の変性であり、治療薬が効果を発揮するには、神経幹細胞が運動ニューロンへと分化することによって神経ネットワーク形成が促進される必要がある。そのため、治療薬の探索にあたっては、治療薬の投与による運動ニューロンの分化を評価することが重要である。本研究では、ルシフェラーゼ遺伝子を含むSMN2遺伝子のミニ遺伝子を導入した未分化神経芽腫細胞に候補薬剤を投与し、蛍光によってスプライシング効率を評価する一方、分化の程度の変化を分子マーカー標識法で評価する事を目的としている。平成23年度はスプライシング修正を視覚的に評価するためのスプライシングレポーターミニ遺伝子の作成を行った。PCRによる変異導入とオーバーラップPCR法の併用により、全長型のスプライシングであればルシフェラーゼ遺伝子がインフレームになり蛍光し、エクソン7をスキップした短縮型のスプライシングだとルシフェラーゼ遺伝子がアウトオブフレームとなり蛍光しないミニ遺伝子を作成し、pCI-neoベクターに挿入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スプライシング修正を視覚的に評価するためのスプライシングレポーターミニ遺伝子を作成し、ベクターに挿入した。ダイレクトシークエンスによって、SMN2遺伝子由来の配列であること、エクソン7のストップコドンを壊すための1塩基挿入やルシフェラーゼ遺伝子のスタートコドンを壊すための1塩基欠失が正しく導入されていることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずミニ遺伝子が組み込まれたベクターを、リポフェクション法を用いて未分化神経芽腫細胞株に導入し、細胞培養室で培養を行う。ミニ遺伝子が正しく導入されているか確認するために、培養した細胞株からgDNAを抽出し、ルシフェラーゼ遺伝子の有無をPCR法を用いて確認する。次にスプライシング調節、神経細胞分化の視覚的な評価システムの確立のために、SMA治療薬探索システムとして使用可能であるか評価を行う。スプライシングの状態の確認のため、顕微鏡を用いて神経芽腫細胞株のルシフェラーゼ発光を確認し、ルミノメーターを用いて定量的な評価を行う。次に分子マーカー標識法を用いた細胞株の分化の程度の確認を行う。神経芽腫細胞の神経細胞への分化のマーカーとなる分子マーカーを標識し、蛍光顕微鏡で細胞形態と分子マーカーの発現を観察する。最後に全長型SMN2 mRNAおよびSMN蛋白の発現量をそれぞれリアルタイムPCR法、ウエスタンブロッティングで定量する。最後に確立した評価システムを用いてSMA治療薬候補の探索を行う。治療薬候補投与前後でのスプライシングの変化や神経細胞への分化を確認し、治療薬候補の有用性を評価する。スプライシングを修復し、神経細胞への分化を認めて初めて治療薬として有用であると判断する。治療薬候補は過去の文献などから選択し、治療薬候補投与前後でルシフェラーゼ発光、分子マーカー標識法による分化度の評価、リアルタイムPCRによる全長型SMN2 mRNAの発現量の定量、およびウェスタンブロッティングによるSMN蛋白の発現量の定量を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費が発生したのは、平成23年度に予定していたミニ遺伝子の未分化神経芽腫細胞へのトランスフェクションに使用する予定であった研究費が未使用であるためである。次年度繰り越し分はトランスフェクション実験におけるコンストラクト作成費、細胞培養用試薬代に使用する予定である。消耗品費としては、当初の計画通り、細胞培養用試薬、定量PCR用試薬、コンストラクト作成用試薬、ルシフェラーゼ活性測定用試薬、オリゴヌクレオチド合成、ウエスタンブロッティング用試薬の購入に使用する。その他国際学会・国内学会において研究成果発表を行う際の旅費、英語研究論文の校閲費・投稿料、共同研究施設利用費、印刷費に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Spinal muscular atrophy patient detection and carrier screening using dried blood spots on filter paper.2012
Author(s)
Harahap NI, Harahap IS, Kaszynski RH, Nurputra DK, Hartomo TB, Pham HT, Yamamoto T, Morikawa S, Nishimura N, Rusdi I, Widiastuti R, Nishio H.
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Journal Title
Genet Test Mol Biomarkers
Volume: 16
Pages: 123-129
DOI
Peer Reviewed
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