2011 Fiscal Year Research-status Report
セレウス菌感染によるライ様症候群の臨床像および病態に関する研究
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23791176
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小林 弘典 島根大学, 医学部, 助教 (70397868)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | セレウリド / セレウス菌 / 脂肪酸代謝障害 / ライ様症候群 / アシルカルニチン |
Research Abstract |
1.セレウス菌感染症に伴う脂肪酸代謝障害を来した症例の集積 タンデムマスを用いて、アシルカルニチン分析による代謝スクリーニングを行った。平成23年度はろ紙血 1,322検体、血清 449検体を分析した。胃腸炎症状を伴いライ様症候群を来した症例の中から2症例について広汎な脂肪酸代謝障害を認めたが、それらの症例でのセレウス菌感染は証明されていない。これまでに申請者が見いだした確定例2症例に加え、疑い例2症例についてもセレウス菌による毒素セレウリドの血清学的な証明を試みる予定である。2.培養皮膚線維芽細胞を用いたセレウリドの脂肪酸代謝への影響の検討 申請者らが既に確立している培養皮膚線維芽細胞を用いたin vitro probe assayを応用してセレウリドが脂肪酸代謝異常症に及ぼす影響を検討した。セレウリドはセレウス菌(Bacillus cereus)から分泌される毒素である。細胞が脂肪酸を要求する状況下において培養液にセレウリドを加えた後に72時間培養を行った。その後、培養液(細胞外液に近似する)をアシルカルニチン分析する事で評価を行った。セレウリド濃度を50 ng/mlとして検討を行った際のアシルカルニチンンプロフィールは我々が所有するグルタル酸尿症2型の遅発型症例と類似し、中鎖から長鎖アシルカルニチンが広汎に上昇していた。また、低濃度(1 ng/ml)では正常コントロールとの差を認めなかった。これらの事から少なくとも一定量までは脂肪酸代謝に与える影響は少ないが、ある濃度に至ると脂肪酸代謝を著しく阻害する事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
症例の蓄積が十分とはいえず、セレウリドが病態に関与したと考えられる症例の確定診断に至っていない。細胞を使用した検討では概ね期待した結果が得られたため、今後は薬剤による検討を追加していきたい。前年度は研究成果の発表が十分に行えていないので本年度は積極的に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
I.症例の蓄積を続けるとともに、これまでの確定症例をまとめ、発表を行う。2.細胞系を用いた研究を当初の予定通りに進め、治療方法の検討などに関する基礎的研究を完遂することを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度は予定していた学会における発表が出来なかったこと、予定よりも研究用の消耗品の使用が少なかった事などで予定した金額に対して残額が生じた。次年度は繰り越した予算で研究成果の発表を増やす事に加えて、研究のための環境整備を行い、当初予定してた予算については予定通りに運用する予定である。ライ様症候群患者の中からセレウス菌感染症が疑われる症例を探し、スクリーニングには引く続きタンデムマスによるアシルカルニチン分析を用いる。疑い例が発生した場合は血清学的な検討や基礎疾患の除外を行うなど確定診断をすすめる。細胞を使用した治療に関する基礎的研究については、β酸化異常症の治療に期待されるベザフィブラートなどの薬剤を投与する事による変化などを検討する予定であり、これらの研究に必要な消耗品などの購入に充てる予定である。
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