2012 Fiscal Year Research-status Report
骨形成不全症の診断、重症度判別における尿中骨代謝マーカーの有用性の確立
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23791177
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
長谷川 高誠 岡山大学, 大学病院, 助教 (90467738)
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Keywords | 骨形成不全症 / 骨吸収マーカー |
Research Abstract |
本年度は健常児における尿中骨吸収マーカーであるI型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)の測定を行い、生後1ヶ月から1歳までの日本人健常乳幼児のNTX値の推移について解析し、過去の欧米からの報告(Lapillonne et al. Pediatrics 2002;110;105-109)と同様に月齢の進行とともに徐々に低下する傾向があることがわかった(生後1ヶ月(n=34):3482±799.6, 生後3-4ヶ月(n=26):2223.4±541.2,生後6-9ヶ月(n=16):1801.9±489.9,生後10-12ヶ月(n=24):1572±589.5)。 生後1歳までの骨形成不全症患児において軽症のI型患児と月齢を合わせた健常児の尿中NTX値を比較検討したところ、オーバーラップするところが認められたが、健常児と比べてI型患児において有意に尿中NTX値が低い事が分かった(健常児:2168.5±613.0, 骨形成不全症患児:1447.6±561.3, p<0.001)。 骨形成不全症に関する遺伝子解析については当初の年間20例という目標にはやや及ばないものの16名についてI型コラーゲン遺伝子(COL1A1,COL1A2)の解析を行い、このうち11名に遺伝子変異を認めた。10名はCOL1A1遺伝子(遺伝子発現の減少する量的な変異6名、コラーゲンの構造が変化する質的な変異4名)、のこりの1名がCOL1A2遺伝子の質的な変異であった。また成人例ではあるが昨年度に報告されたV型の骨形成不全症の原因遺伝子であるIFITM5遺伝子の既報の遺伝子異常を1名に同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本人における健常乳幼児の尿中の骨吸収マーカーであるNTXの動態を決定でき、また骨形成不全症のなかで最も軽症な群であるI型の骨形成不全症と健常乳幼児のNTX値を比較検討することが出来たこと。またこれらの2群間に有意な差を認めることを示すことができたこと。遺伝子解析に関しては目標の8割程度の数ではあるが、日本全国からの遺伝子解析依頼を受けてI型コラーゲン遺伝子の遺伝子解析を行うことができ、11名に遺伝子変異を同定することができている事。カナダのグループから報告されたV型の骨形成不全症が日本人にも発症しうることを確認できたこと。
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Strategy for Future Research Activity |
本年は研究の最終年度となるため遺伝子解析依頼を受けた患児及び当院に紹介となった患児の臨床情報や尿中骨吸収マーカーの値について検体数を増やしていきながら、健常児との比較検討を行っていき、骨形成不全症患児を診断しうるバイオマーカーとなり得るかどうかの統計的な解析を行う。そしてバイオマーカーとなり得る場合、判定に適切な月齢及びおよび閾値の設定を最終的に行う。 骨形成不全症に関する遺伝子解析については昨年までの2年間と同様日本全国の医療機関から遺伝子解析依頼を受け、解析を進めていく。昨年度から本年度にかけて新たにBMP1,TMEM38B,WNT1といった新たな常染色体劣性遺伝形式の原因遺伝子や常染色体優性遺伝形式のV型の原因遺伝子であるIFITM5遺伝子が同定されているため、昨年度末までに解析を行った者のうち遺伝子異常の認められなかった者について、これらの遺伝子解析を行い、他の骨形成不全症との骨吸収マーカーの相違などについて検討する。 これらのデータを元に骨形成不全症におけるgenotype-phenotypeの関連性と尿中骨吸収マーカーとの関連性を検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
骨形成不全症の原因遺伝子の塩基配列決定に必要なPCR試薬および必要なキット類(DNA抽出用キット、PCR Purification KitおよびDye Ex kit)の購入および尿中骨吸収マーカーの測定費用に用いる予定である。また変異のスクリーニングに利用しているDHPLCに使用するアセトニトリルなどの溶液、DHPLCカラムの劣化が進んだ場合は、カラムの購入に当てる。本年度はカラムの劣化が少なく、予定よりも長くカラムが使用できており、カラムの購入を1度しか行っておらず、このため予定よりも使用額が少なくなった。来年度はカラムの購入を行う可能性が高く、カラム購入費用としての上乗せを行った。また新たに発見された骨形成不全症の原因遺伝子の解析用のPCRプライマーの購入費用としても使用する予定である。
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