2011 Fiscal Year Research-status Report
小児自己免疫疾患における粘膜免疫系の機能解明と粘膜誘導型免疫寛容療法の開発
Project/Area Number |
23791185
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
瀧本 智仁 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50599511)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | TGF-β / 粘膜免疫 / 制御性T細胞 / 免疫寛容 / Th17細胞 / 自己免疫疾患 |
Research Abstract |
既に申請者らは、生体の免疫学的恒常性維持に重要なFoxp3陽性制御性T細胞(Treg)と自己免疫性疾患や感染症等において重要な役割を果たすIL-17高産生炎症性T細胞であるTh17細胞の分化制御メカニズムをTGF-βの下流シグナル分子であるSmad欠損マウスを用いて明らかにしている。本研究では、過去の報告や申請者らの得た知見を元に、TGF-βを豊富に含む腸管を始めとする粘膜免疫系の自己免疫疾患の病態形成における役割を明らかにし、粘膜誘導型免疫寛容療法の確立を目的としている。 H23年度の研究目標であった(1)TGF-β-Smadシグナルを介したFoxp3遺伝子発現調節機構の解明については、まずHEK293細胞及びJurkat細胞を用いたFoxp3遺伝子のルシフェラーゼレポーター解析を行った。Foxp3のpromoter領域はSmad2とSmad3いずれを強制発現しても転写活性の増加はみられず、過去にSmad3が結合すると報告されたintronにあるenhancer領域にSmad2も同様に作用することを見出した。また、ChIP解析によりこの領域にSmad2とSmad3が共に結合していることも確認出来た。Smad3と異なり、Smad2にはDNA結合ドメインがないことから、Smad2がFoxp3の転写活性を制御する上で何らかの分子と協調して機能していると予想される。しかしながら、Smad2と相互作用すると既に報告されている複数の分子については、Smad2と共発現してもルシフェラーゼレポーター解析では有意な変化はみられず、現在も検索中である。 又、TGF-β、Smad2/3、Foxp3のSNP解析を行う為、昨年より全身性若年性特発性関節炎や炎症性腸疾患等から得た患者末梢血よりゲノムDNAを抽出し、現在準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、(1) TGF-β-Smadシグナルを介したFoxp3 遺伝子発現調節機構の解明についてはエピジェネティック解析によりSmad2とSmad3の機能的重複性をすでに見出しており、a) Smad2と共役する因子の解明については現在も検索を続けているが、b) Smad2が結合する Foxp3ゲノム領域の同定はすでに達成している。 (2) T 細胞におけるTGF-β-Smadシグナルのエピジェネティック解析と(3) 免疫疾患とTGF-β-Smadシグナルの関連性の検討については現在患者サンプルを集積中であり、近日解析する予定である。 以上のように、本年度に予定していた研究においては新たな知見も得られており、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記に記した現在集積している患者検体のSNP解析等の解析を進めていく。更に、その解析を元にTGF-β-Smadシグナルの応答性についてレポーター解析等で検討を行い、疾患におけるTGF-β-Smadシグナルの役割について検証を進める。 また、患者Tリンパ球を分離し、培養下にTh17やTreg等のヘルパーT細胞サブセット分化能について調べ、各疾患の病態との関連性を検証する。更に、Toll-like受容体やNOD-like受容体等のパターン認識受容体の自然免疫細胞及び獲得免疫細胞における発現と機能的な差異を健常者と疾患群とで比較検証し病態解明を行う。 昨年度より当研究室で進めている免疫疾患患者のiPS細胞樹立を用いて、セルラインではなくプライマリー細胞による機能解析を計画しており、これによりより生理的且つ効率的な研究が可能と考えられる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費に関しては、主に上記の研究推進方策に必要な培養関係及びサイトカイン等の刺激分子・抗体に加え、解析に必要な抗体等の実験備品の購入の為に使用する予定である。又、本プロジェクトの継続的な推進を行う為に共同研究者や共同研究機関を募っていきたいと考えている。その為に積極的な学会発表と論文発表を行って行く予定であり、その諸経費としても使用する。
|