2011 Fiscal Year Research-status Report
発達障害モデル動物大脳皮質における細胞内シグナル伝達異常とその病態形成への関与
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23791188
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
宗宮 仁美 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (20548713)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 神経栄養因子 |
Research Abstract |
申請者らは疫学調査に基づく精神疾患モデル動物(妊娠期感染症モデル動物)の大脳皮質神経細胞において、1.神経回路の形成に不可欠な神経栄養因子シグナル(NTs)不調、2.神経細胞の機能的特性を左右する転写因子の発現プロファイルの変化を見出している。本研究では、1.と2.の事象の関連を調べることにより、病態脳の形成メカニズムを考察することを目的としている。これらを達成するため、平成23年度は、以下の項目について検討をおこなった。なお、妊娠期感染症モデル動物としてPoly I:Cを投与した妊娠マウスから誕生する仔を用いた。1.大脳層特異的遺伝子の発現変化がNTsシグナル伝達効率に与える影響妊娠期感染症モデル動物では、大脳皮質の第II-IV層に固有な転写因子であるCux1、Brn1の発現が低下していることを見出している。これらの転写因子を抑制すると、神経細胞の性質にどのような変化を与えるのか検討するため、これらの転写因子に対する発現抑制ベクターを作成し、抑制効果の検討を行った。次年度、神経細胞へこれらのベクターを遺伝子導入し、培養下でNTsシグナルに与える影響を解析する予定である。2.妊娠感染症モデル動物が外界からの入力情報伝達プロセスに与える影響妊娠期感染症モデル動物に認知学習タスクを行わせ、学習成立後、脳内での最初期遺伝子の発現変化を検討した。対照群と比較して、妊娠期感染症モデル動物では、神経活動に依存して変化する最初期遺伝子の発現分布に変化が認められた。次年度、この行動時のNTsシグナルがどのように変化しているのかを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らは、妊娠期感染症モデル動物においていくつかの層に固有の転写因子の発現プロファイルが変動することを見出している。この転写因子の発現プロファイルの変化がNTsシグナル経路の伝達効率を変化させる要因となり得るのかどうかを検討するために以下の項目をおこなった。1大脳皮質層特異的遺伝子の発現抑制ベクターの作成:大脳皮質の第II-IV層に固有な転写因子であるCux1、Brn1が妊娠期感染症モデルマウスで発現低下をしていたため、これらの遺伝子に対する発現抑制ベクターをそれぞれ4種作成した。これらのベクターの発現抑制効果を検討おこなってベクターの選別を行った。また、これらの発現抑制ベクターを神経細胞へ効率よく遺伝子導入する方法を検討し、次年度作成した発現抑制ベクターを神経細胞へ遺伝子導入し、NTsシグナル伝達効率に与える影響を調べる準備を整えることができた。2.妊娠期感染症モデル動物から調製した神経細胞において、NTsシグナル伝達効率に変調が認められたため、認知学習過程における細胞内情報伝達プロセスの失調の可能性を検討するため、タスク学習の成否と神経活動初期遺伝子の脳内での発現分布を組織科学的に解析し、それらの相関性についての検討を行った。以上、本研究の進捗状況は、おおむね順調であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、以下の項目について明らかにし、病態脳形成メカニズムの一端をあきらかにすることを目的とする。1.大脳皮質層特異的遺伝子の発現変化が神経細胞の機能特性に与える影響培養大脳皮質神経細胞へ遺伝子導入し、そのNTsシグナル伝達効率の変化、神経細胞の形態やシナプス形成に与える影響を解析する。また、子宮内電気穿孔法を用いて、マウス胎仔大脳皮質前駆細胞へ遺伝子導入し、神経投射に与える影響を検討する。2.妊娠感染症モデル動物が外界からの入力情報伝達プロセスに与える影響妊娠期感染症モデル動物が頬髯からの情報を用いたタスクを行う際に、NTsシグナルがどのような変化をしているのかを各脳部位について組織化学的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、下記の研究項目に対して、以下のような物品の購入を予定している。1.大脳皮質層特異的遺伝子の発現変化が神経細胞の機能特性に与える影響 実験動物(マウス)、動物飼育管理(飼料・床敷)、神経細胞培養関連試薬および器具、分子生物学関連試薬、免疫染色関連試薬(抗体等)2.妊娠感染症モデル動物が外界からの入力情報伝達プロセスに与える影響 実験動物(マウス)、動物飼育管理(飼料・床敷)、免疫染色関連試薬
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