2012 Fiscal Year Annual Research Report
脳室下帯特異的発現遺伝子の大脳新皮質形成における役割の解明
Project/Area Number |
23791193
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
荒巻 道彦 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (20338099)
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Keywords | 発生・分化 |
Research Abstract |
ヒトを含めた哺乳類の脳室下帯は、大脳新皮質形成期の中期頃から形成され始めることが知られている。共通する特徴としては、脳室下帯を構成する神経細胞が最終的に大脳皮質の第II層から第IV層を形成するという点である。大脳皮質の第II層から第IV層は哺乳類にのみ認められる特徴的な構造で、マウスと比べてヒトでは特に著しく発達しており、ヒトの高次脳機能を担っていると考えられている。 脳室下帯に特異的に発現する遺伝子が今までに幾つか報告されている。これらの遺伝子は、脳室下帯のみに発現し、大脳皮質の他の領域には発現していないことから、脳室下帯における神経細胞の機能に重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では、脳室下帯特異的発現遺伝子の1つである、UNC-5 homolog D(Unc5D)遺伝子に着目し、その機能解析を行なった。Unc5Dの属するUnc5ファミリー遺伝子は、膜受容体蛋白質として細胞内へシグナルを伝達する役割の他に、リガンドとなる蛋白質が存在しない場合には細胞をapoptosisに誘導する役割があることが知られている。発生期の脳室下帯に特異的に発現するUnc5D遺伝子にもリガンドの非存在下では細胞をapoptosisに導く役割があると考えられる。大脳皮質を構成する各神経細胞層における神経細胞の数は厳密に制御されていることからUnc5D遺伝子も脳室下帯において神経細胞数を調節する重要な役割を担っているものと予想され、本研究ではその検討を行った。その結果、Unc5D遺伝子にはapoptosisを誘導する機能があることが確認され、発生期の脳室下帯の新たな役割についての興味深い示唆を得ることができた。
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