2011 Fiscal Year Research-status Report
小児型ポンペ病患者由来iPS細胞を用いたポンペ病心筋細胞の病態解析
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23791196
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
樋口 孝 東京慈恵会医科大学, 医学部, ポストドクトラルフェロー (30595327)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ポンペ病 / ライソゾーム病 / iPS細胞 |
Research Abstract |
【具体的な内容】平成23年度はヒトiPS細胞から心筋細胞への効率の良い分化誘導プロトコールの確立を目指し研究を行った。心筋細胞への分化誘導方法はJ. Zhangらの方法(Circ. Res. (2009))とN. Yokooらの方法(Bioch. and Bioph. Res. Comm. (2009))を参考にした。先ずZhangらの方法を用いて心筋分化誘導を試みたが、培養手技の問題により心筋特有の拍動運動が観察できなかった。次にYokooらの方法を用いて分化誘導を行った所、心筋特有の拍動が観察できたが分化効率はかなり悪かった。そこでZhangらとYokooらの方法を元に独自に改良を加え新しいプロトコールを作製し、効率の向上を検討した。独自の改良点は、培地に抗生物質を加え長期培養中の細菌混入を防ぐ点、ROCK阻害剤(Y-27632)を加えてiPS細胞の抗アポトーシス作用を高めることで胚葉体(EB)の形成効率を向上させた点、超低吸着U底96穴マイクロプレートを用いてEBの形態の均一化を図った点である。以上の改良により、若干の分化効率の向上が確認できた。ポンペ病iPS細胞由来EBと健常人iPS細胞由来EBとの形態・充実度・大きさの差異は認められなかった。また、23年度予定していたDNA脱メチル化剤を用いた分化効率の向上の検討と心筋細胞拍動開始日の検討は行なえなかった。【意義と重要性】J. Zhengら、N. Yokooらの方法で用いられたEB作製方法はEBの形態や大きさが揃わず不均一となることが多かった。本研究で改良した方法は既報と比べて形が均一なEBを作成できる。この方法を用いることで『EBの質』による分化誘導効率のバイアスを少なくすることが可能であり、本年度の研究は次年度に行う心筋細胞の機能評価実験を行う上で非常に重要な検討であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度にヒトiPS細胞から心筋細胞への分化誘導プロトコールを確立できたことから、おおむね当初の計画通りに進んでいる。当初の計画のうち、心筋細胞の拍動開始日の検討と、DNA脱メチル化剤を用いた分化誘導効率の改善を検討できなかった。来年度これらの検討を行う予定である。よって本年度の研究目標の達成度は80~90%と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
先ず早期にDNA脱メチル化剤による心筋分化誘導への影響を解析し、DNA脱メチル化剤が本研究プロトコールに必要か否か検討する。同時に心筋細胞拍動開始日の検討も行う。ついで当初次年度に計画していた研究を行う。iPS細胞の心筋細胞への分化誘導は2ヶ月近くを必要とする。分化誘導プロトコールの後半は培地交換と顕微鏡による細胞の観察が主体となるので、この期間に新たに心筋細胞への分化誘導を始める。心筋細胞の生化学的・分子生物学的解析もこの期間に行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度の研究費の未使用額(残額)は300,637円となった。この額は本年度の交付決定額(直接研究経費分220,000円)のおよそ13%となる。この未使用残額は23年度計画の未達成の研究(心筋細胞拍動開始日の検討とDNA脱メチル化剤を用いた検討)に相当するものである。次年度の研究は当初の計画通りに遂行し、さらに23年度未達成の研究は、23年度の残額を用いて次年度に実施する計画である。【次年度の研究費の使用計画】細胞培養関連:600,000円、病理・組織学的解析:250,000円、生化学・分子生物学的解析250,000円、23年度未達成の研究:300,637円
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