2011 Fiscal Year Research-status Report
先天性横紋筋融解症特異的iPS細胞を用いた新規疾患モデルの作製と治療法の開発
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23791200
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
安野 哲彦 福岡大学, 医学部, 助手 (80551994)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 横紋筋融解症 |
Research Abstract |
Carnitine palmitoyltransferase II(CPTII)は、長鎖脂肪酸のミトコンドリアへの取り込みに必須の酵素である。その欠損症は常染色体劣性遺伝病で、脂肪酸β酸化の低下によりエネルギー不足に陥り、横紋筋融解症を来す。これまで国内外の研究者からの依頼を含めて本症の遺伝子解析を多数の症例にて行い、国際誌に報告している。しかし、本症の病態解明と有効な予防法や治療法の確立はできていない。研究実施のための筋組織の入手は有症時に得る必要性があるが、入手は困難である。この問題を解決するために、京都大学iPS細胞研究所にて患者皮膚細胞よりiPS細胞を樹立し、病態をin vitroにて再現し、新規試験管内疾患モデルの作製と治療法の開発することを目標として研究を開始した。平成22年、CPTII欠損症患者とその家族より同意を得て、皮膚線維芽細胞から遺伝子導入にてヒトiPS細胞を作製した。そろぞれのiPS細胞を胚様体を形成させて、骨格筋になりやすいクローンの選別を行った。横紋筋融解症の予備実験として、マウス筋芽細胞由来のC2C12を用いて、タイムラプス撮影下に電気刺激による収縮実験が可能となった。ヒトiPS細胞にリポフェクションにて遺伝子導入を行い、ミオシン重鎖(MHC)にて免疫染色される骨格筋を分化誘導した。現在、より成熟した均一な骨格筋を得るための条件検討を行っている。同様の方法にて、CPTII欠損症患者由来のiPS細胞を分化誘導している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度、京都大学iPS細胞研究所において本研究代表者が、(1)患者とその家族からiPS細胞の樹立のために、CPTII欠損症の患者と未発症で同一の遺伝子変異をもつ弟、ヘテロ保因者の両親の皮膚からiPS細胞樹立した。また、樹立された同一個体由来の複数のiPS細胞株の比較評価を行った。(2)iPS細胞から骨格筋への分化誘導のために、予備実験として健常人由来のiPS細胞を用いて骨格筋の分化誘導法を検討した。(3)横紋筋融解現象を解析するために、インキュベーター内でタイムラプス撮影を行いながら電気刺激を行う実験系を立ち上げた。マウス筋芽細胞由来のC2C12に、40Vの電気刺激を加えて8時間の連続刺激が可能となり、iPS細胞への応用が期待できる。これらの実験結果を元に、既に作製しているCPT2欠損症患者由来のiPS細胞に用いて、病態の解明につながるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度、福岡大学医学部腎臓・膠原病内科において、iPS細胞由来骨格筋細胞(以下、iPS筋細胞)の横紋筋融解条件の決定骨格筋細胞に刺激を加え収縮弛緩の条件を決定し、更に刺激を強めて横紋筋融解現象を確認する。病態学的検討のために、患者およびその家族のiPS骨格筋細胞に電気刺激を与え、遺伝子発現の網羅的解析を行い健常人と解析結果の比較をする。リアルタイムPCRにて病態形成に関与する遺伝子の確定と、その遺伝子産物の生物学的な機能解析を行う。また、CPTIIはミトコンドリアの内膜にある酵素であるため、電子顕微鏡にて形態的な変化をみる。島根大学医学部小児科学教室の協力により、タンデムマス質量分析計にて病態の再現性およびカルニチン投与による変化をみる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、京都大学iPS細胞研究所(増殖分化機構研究部門 長船研究室)および福岡大学医学部腎臓・膠原病内科第二研究室を中心に行っている。主な研究材料はヒトiPS細胞と分化誘導した培養細胞である。研究遂行に必要な培養設備、顕微鏡、解析装置は実施場所に備わっている。ヒトiPS細胞の細胞培養用培地は非常に高額(500 mlで定価40,000円程度)となる。よって、本研究経費における消耗品費が占める割合が高く、その内訳として、細胞培養に用いるプラスティック製品、細胞培養用培地および添加する増殖因子が多くの割合を占める。また情報交換や学会で研究成果を公表するために必要な出張費、および論文発表の際の諸経費と使用する計画である。繰越金(\396,392)に関しては、本研究が予定よりも順調に進行し、消耗品や薬品の購入が少なくなったためである。この繰越金は、次年度の消耗品および薬品に使用する予定である。
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