2012 Fiscal Year Research-status Report
先天性横紋筋融解症特異的iPS細胞を用いた新規疾患モデルの作製と治療法の開発
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23791200
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
安野 哲彦 福岡大学, 医学部, 助手 (80551994)
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Keywords | iPS細胞 / 横紋筋融解症 |
Research Abstract |
Carnitine palmitoyltransferase IIは、長鎖脂肪酸のミトコンドリアへの取り込みに必須の酵素である。その欠損症は常染色体劣性遺伝病で、脂肪酸β酸化の低下によりエネルギー不足に陥り、横紋筋融解症を来す。本症の病態解明と有効な予防法や治療法の確立はできていない。研究実施のための筋組織の入手は有症時に得る必要性があるが、入手は困難である。この問題を解決するために、患者皮膚細胞よりiPS細胞を樹立し、病態をin vitroにて再現し、新規試験管内疾患モデルの作製と治療法の開発を開始している。現在、CPTII欠損症患者のiPS細胞由来骨格筋細胞が分化誘導に成功しており、健常人由来の細胞と比較検討を行い、病態の解明と治療法の開発を目標としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①京都大学iPS細胞研究所にて本研究代表者が、患者とその家族からiPS細胞を樹立した。②iPS細胞から骨格筋への分化誘導のために、健常人由来のiPS細胞を用いて骨格筋の分化誘導を行った。③患者のiPS細胞においても、骨格筋への分化誘導が可能となった。④分化誘導した骨格筋を培養し、培地のタンデムマスによる解析にて、病態を模倣しており、ベザフィブラートにてβ酸化が改善することを確認した。38度の環境下では、β酸化は低下するがベザフィブラートにて改善した。⑤マウスの筋芽細胞であるC2C12を用いて、筋の電気刺激方法を確立しており、ヒトiPS細胞由来の筋細胞にも同様の実験が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
①遺伝子発現の網羅的解析を行い、健常人と比較する。 ②リアルタイムPCRにて病態形成に関与する遺伝子の確定と、その遺伝子産物の生物学的な機能解析を行う。 ③電子顕微鏡にて形態的な変化を観察する。 ④IL-6を中心としたサイトカイン(マイオカイン)の変化をみる。 ⑤治療薬の検討のために、現在効果が確認できているベザフィブラート以外の薬剤を投与する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、平成22年度に在籍していた京都大学iPS細胞研究所(増殖分化機構研究部門 長船研究室)の協力のもと、福岡大学医学部腎臓・膠原病内科第二研究室を中心に行う。主な研究材料はヒトiPS細胞と分化誘導した培養細胞である。研究遂行に必要な培養設備、顕微鏡、解析装置は実施場所に備わっている。 ヒトiPS細胞の細胞培養用培地は非常に高額(500 mlで定価40,000円程度)となる。よって、本研究経費における消耗品費が占める割合が高く、その内訳として、細胞培養に用いるプラスティック製品、細胞培養用培地および添加する増殖因子が多くの割合を占める。
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