2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒト心筋分化誘導因子の同定-再生医療との複合戦略の創成-
Project/Area Number |
23791209
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation |
Principal Investigator |
草川 森士 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (80462802)
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Keywords | 心筋分化 / 多能性幹細胞 / 未分化細胞 / 催奇形性 |
Research Abstract |
申請者は、平成23年度からの科学研究費補助金・若手研究Bを受け、その研究課題のもとに、ヒト心筋分化誘導因子の同定に向けた研究に取り組んでいる。胚性癌細胞、間葉系幹細胞、血管平滑筋細胞を利用した網羅的遺伝子解析によって、心血管系の発生、機能に関わる可能性のある候補遺伝子の探索を行っているが、現在のところ、心筋分化に関わるような新規の遺伝子の同定には至っていない。本年度は、ヒト心筋分化誘導に関わる因子をこれまでと異なる観点から探索することにした。ヒト多能性幹細胞を比較的高率良く心筋細胞へ分化誘導する実験系をこれまでに確立してきたが、分化細胞の純度をさらに高めるには、分化誘導を促進させるとともに、分化したものだけを選別し未分化なものを取り除くことも重要と考えた。未分化なヒト多能性幹細胞は、移植後に腫瘍形成する可能性をはらんでいる。このことは、ヒト多能性幹細胞由来の心筋細胞を臨床使用する場合の安全性において大きな懸案事項となっている。未分化な多能性幹細胞を除去する方法としては、薬剤処理を考えている。多能性幹細胞は、胎児期の発生を阻害するような催奇形性を持つ薬剤に対し、成熟細胞に比べ感受性が高いことが知られていることから、現在、催奇形性を持つことが知られ、さらに多能性幹細胞特異的に毒性を持つような薬剤のスクリーニングを進めている。表皮繊維芽細胞、ヒトiPS細胞、ヒト間葉系幹細胞、ヒト胚性がん細胞などを用い、各種薬剤による増殖性への影響を評価した結果、ヒトiPS細胞、ヒト胚性がん細胞に対し高い増殖抑制作用を持つ薬剤が1種類認められている。今後、iPS細胞の別ラインでも検証し、さらに、初代培養系心筋前駆細胞への影響も評価していく。また、未分化細胞特異的に蛍光を発現するようなiPS細胞の作出も進めており、この細胞を用いた心筋細胞分化の純度を評価する系も確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト心筋分化誘導因子の同定という課題ではあるが、現在のところ、心筋分化に関わるような新規の遺伝子の同定には至っていない。心血管系の発生、機能に関わる可能性のある候補遺伝子はいくつか得られており、それらの働きについて解析を進めてはいるが、本筋からは少し外れている。しかしながら、ヒト多能性幹細胞を心筋細胞へ分化誘導する系が確立されているので、その分化効率をいかにして高めるかという観点で、今後、研究を進めていく予定である。すでにヒトiPS細胞に対し高い増殖抑制作用を持つ薬剤が1種類認められており、この薬剤が分化した心筋の純度を高める可能性が期待される。分化促進と共に未分化除去を効率的に進め、さらにそれらのメカニズムを追うことで、心筋分化に関わる重要な因子が見えてくるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
薬剤による未分化細胞の増殖抑制作用をヒトiPS細胞複数ラインについて検証する。これら薬剤の心筋細胞(初代心筋前駆細胞を予定)への影響、ヒトiPS細胞からの心筋分化への影響も評価する。未分化細胞特異的に毒性を持つような薬剤を用い、ヒトiPS細胞から分化させた心筋細胞中の未分化細胞除去を試みる。未分化細胞特異的、または心筋細胞特異的に蛍光を発現するようなiPS細胞を作出し、これらの細胞を用いた心筋細胞分化の純度を評価する系を確立する。そしてこの系で薬剤のスクリーニングを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験計画に少し変更が生じたため、購入しなかった消耗品があったこと、また、新たに計画した実験があったが、必要な消耗品の入手にかなり時間を要することが判明し、年度内に納品されない可能性があったため、次年度にあらためて購入することにしたこと、などが理由である。 主に消耗品費として使用の予定。また、研究が順調に進むことを想定し、学会発表のための出張費、論文発表のための、英文校正、雑誌掲載料、別刷費用等での使用も予定している。
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