2016 Fiscal Year Research-status Report
手足口病の原因ウイルスの抗原性状変化と周期的流行に関する分子疫学的研究
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23791212
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Research Institution | Toyama Institute of Health |
Principal Investigator |
板持 雅恵 富山県衛生研究所, ウイルス部, 主任研究員 (70393080)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2018-03-31
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Keywords | 手足口病 / 分子疫学 / 血清疫学 / エンテロウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
手足口病は、手足や口腔粘膜に生じる水疱性の発疹を特徴とし、日本では毎年夏季に小児を中心に流行する。本研究では、最近30年間に分離した手足口病ウイルスについて、流行要因を明らかにするため、ウイルスの抗原性状の変化や住民の抗体保有状況を調べた。平成28年度の研究成果は以下のとおりである。 1.エンテロウイルス71型(EV71)の分子疫学:1981~2013年に分離したEV71のカプシド蛋白質全領域のアミノ酸配列を比較した。その結果、862アミノ酸のうち、分離株間のバリエーションは34か所でみられ、分離年別、genogroup別に分類された。1983年、2000年、2010年、2013年に分離された株はGenogroup B、1989~1997年、2003~2010年に分離された株はGenogroup Cにそれぞれ属した。2010年にはgenogroup B及びCが検出され、同時期に両グループの株が地域においてそれぞれ伝播していた可能性が考えられた。 2.コクサッキーウイルスA16型(CA16)の抗原性状解析:1995年と2007年のCA16分離株について、それらのウサギ免疫血清(ポリクローナル抗体:自家製)と標準抗血清(G-10)に対する中和抗体価を比較したところ、分離株間ではほぼ同等であったが、G-10とこれらの分離株とは4倍以上のずれがあった。したがって、抗原性状は分離株間では類似しており、G-10とこれらの分離株とは比較的異なる可能性が考えられた。 3.CA6の血清疫学:2011年にCA6型による手足口病が全国的に流行した。流行要因を調べるためにCA6の血清疫学調査を実施したところ、2009年の0歳から6歳の抗体保有率は、2007年や2013年に比較すると顕著に低かった。これらのことから、CA6による手足口病の流行は、乳幼児における抗体保有率の低さが一因と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度~平成27年度は産休・育休のため、研究を中断した。平成28年度はほぼ計画どおりである。中和抗体価の交差試験により1995年と2007年のコクサッキーウイルスA16型(CA16)分離株の抗原性状が類似していることが推察されたため、研究計画に記載した分離株間の中和速度の測定及び、住民の血清疫学調査は実施しない。 一方、2010年以降、手足口病患者からのCA6検出例が多いため、CA6について、住民の血清疫学調査と分子疫学的解析を実施し、流行要因を調査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.コクサッキーウイルスA6型(CA6)の分子疫学 2010年以降、CA6は手足口病患者からの検出頻度が高く、2017年も検出が続いている。そこで、流行要因を明らかにするため、国内外の分離株とウイルスのカプシド領域塩基配列、及びアミノ酸配列を比較し、国内外の流行との関連性を調べる。 2.本研究は最終年度のため、調査結果をまとめ、学術論文や学会等で報告する。
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Research Products
(1 results)