2011 Fiscal Year Research-status Report
PUVA処理制御性樹状細胞による移植片対宿主病への新たな治療戦略
Project/Area Number |
23791213
|
Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kanazawa Medical Center |
Principal Investigator |
前馬 秀昭 独立行政法人国立病院機構(金沢医療センター臨床研究部), その他部局等, 研究員 (10419335)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 制御性樹状細胞 / GVHD / PUVA療法 / 骨髄移植 |
Research Abstract |
難治性の血液疾患(白血病、再生不良性貧血等)に対し、幹細胞移植は現時点において最終的な治療として確立されている。しかし、HLA一致のドナーが得られない患者にとっては、移植片対宿主病(Graft-versus-Host Disease: GVHD)のリスクのために移植が行えない事態となっている。骨髄バンクのドナー登録者が20万人に達した現在でもHLA不一致のため、骨髄バンクの登録を受けた約4割の患者に、幹細胞移植が行えない状況となっている。HLA一致のドナーが得られない患者にとっても、HLAの壁を乗り越える安全な骨髄移植の開発を最終的な研究目標としている。我々は、レシピエント骨髄からGM-CSFを添加し未熟樹状細胞を大量に培養した後、psolarenと紫外線を併用し(PUVA療法の応用)制御性樹状細胞を大量に作製することに成功した。この方法で作成された制御性樹状細胞は、ドナータイプ、ホストタイプ、サードパーティのいずれにおいても、混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction)を強く抑制させる機能を有していた。MHC非依存性に混合リンパ球反応を抑制させた結果から、MHCミスマッチのマウス骨髄移植モデルを用いて、容易に得られるサードパーティからのこの制御性樹状細胞を同時に輸注することによりGVHDの発症を特異的に抑制できる可能性がありその機能を今年度はin vitroにて明らかにしていった。具体的には、PUVA処理した樹状細胞における制御性の性質の獲得は、抗炎症性サイトカイン(IL-10およびTGF-β)およびindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)を介して得ているのではなく、細胞間接触および共刺激分子(CD80,CD86)のdown regulationによって得ている事が判明し十分な基礎的データを得る事ができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
In vitroの解析では、PUVA処理した樹状細胞の性質に関して、抗炎症性サイトカイン(IL-10およびTGF-β)を介して抑制するのではなく、共刺激分子(CD80およびCD86)のdown regulation およびindoleamin2,3-dioxygenase (IDO)のmRNAの発現の増加、細胞間接触によるものであることが明らかとなった。しかしマウスGVHDモデルにおけるPUVA処理した樹状細胞の役割に関して、その細胞の至適輸注数の検討が十分に行えず、その細胞を輸注した事による生存曲線の改善や、病理学的GVHDスコアーの検討が行えなかった。またGFPトランスジェニックマウスからるPUVA処理した樹状細胞を作製し、移植後の生体内動態を観察することを行う予定だったが、機器の関係で行うことができず、来年度の課題となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の目標であった、マウスGVHDモデルにおけるPUVA処理した樹状細胞の役割を明らかにし、その生体内動態を観察する。また、PUVA処理した樹状細胞の輸注にてGVHDの発症が抑制されると考えているが、ドナー細胞による抗腫瘍効果(Graft-versus-Tumor effects:GVT)の保持の証明は必須である。GFPを導入したマウス白血病・リンパ腫細胞株A20とBCL1の2種類を用い、 皮下注または静注し担癌モデルマウスを作製し骨髄移植を行い、 生存曲線、Imaging機器ならびにFACSを用いて残存腫瘍細胞量の定量化、病理学的に腫瘍組織に浸潤している細胞の同定を行う。最終的には、人への臨床応用である事から、ヒトの骨髄細胞ならびにbuffy coatを用いて同様にPUVA処理した樹状細胞を作製し、この細胞もマウスでの検討と同様に免疫制御能を有しているかどうかを検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の遂行に当たり、最も経費を必要とするのがマウスの購入費、ならびにその飼育費となる。1回の実験で、骨髄移植ホストマウスを30匹、ドナーマウス10匹の計40匹を予定している。マウスの移植実験では、複雑な生体反応を評価するために1グループ(例えば何かの薬剤などを投与する場合)あたり少なくとも5匹が最低必要となり、そのマウス購入費が約10万円となる。また実験は、再現性ができることが必要である事から再確認用の実験を行うこと、また実験の設定のための予備実験もあり、現時点では計8回予定している。次に費用を必要とするのが移植後の解析に必要な各種モノクローナル抗体と制御性樹状細胞の培養に用いられるサイトカイン購入費となる。
|
Research Products
(3 results)