2011 Fiscal Year Research-status Report
二分脊椎症モデルSIP1ノックアウトマウスを用いた神経管閉鎖メカニズムの解析
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23791215
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
西崎 有利子 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 周生期学部, リサーチレジデント (90378901)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 二分脊椎症 / 神経管閉鎖 / SIP1 |
Research Abstract |
本研究では、神経管閉鎖障害を示すSIP1ノックアウトマウスを、二分脊椎症のモデル動物として解析し、神経管閉鎖障害のメカニズムを解析することを目的としている。本年度はまず、神経管閉鎖過程におけるSIP1タンパクの発現局在を観察するために、SIP1遺伝子locusに遺伝子相同組み替えによりGFPを挿入したレポーターノックインマウスを用いて、GFP抗体で免疫組織染色を行うことでSIP1の発現を検出した。その結果、SIP1タンパクは、神経管閉鎖過程を通して神経管全体及び体節に発現していた。神経管の大部分の細胞では、SIP1は核内に存在していたが、神経管の背側の一部の細胞においては、核ではなく細胞質に局在していることが明らかになった。また、胎生8日目の神経管閉鎖期直前にあるSIP1ノックアウト胚の神経板では、神経板細胞の細胞極性不全が観察され、野生型胚と比較してSox2の発現が低下していることが免疫組織染色で確認された。また、胎生8.5日目のノックアウト胚では、神経管の形成されるべき背部に、異所的な小疱が形成されていた。小疱は上皮様の一層からなる細胞で構成されており、Sox2の発現とE-cadherinの発現が見られた。これらの結果から、SIP1の欠失により細胞極性が消失した神経板の細胞は、細胞運動の障害によって神経管閉鎖に至らず、さらに、Sox2の発現低下により神経分化にも異常をきたし、上皮組織でしか発現が見られないはずのE-cadherinの発現が起こり、上皮様小疱を形成したと考えられた。これらの結果は、SIP1遺伝子が、神経管形成過程において、細胞極性の制御と神経分化という2つの役割を担っていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、神経管閉鎖障害を示すSIP1ノックアウトマウスにおいて、どのような現象が起こっているかを分子的に明らかにすることができた。SIP1ノックアウトマウスにおいて、正常胚と比較して違いが見られた、アクチンの分布、細胞の形態、Sox2の発現等に見られる異常が、神経管閉鎖障害の原因となっていることが示唆された。また、SIP1は、神経管細胞の分化と、神経板の細胞極性によってもたらされる細胞運動、の2点に作用していることが示唆された。このことは、神経管閉鎖障害の原因を要素化できたことと共に、来年度の解析をこの2点に焦点して行うという解析方針の展望が得られた。さらに、SIP1タンパクの細胞内局在を、レポーターノックインマウスを用いて観察可能となり、このことにより、SIP1は多くの神経管細胞で核に存在し作用していることが明らかになった。一部神経管の背側では細胞質にとどまっている細胞もあり、SIP1が細胞極性の制御にどのように関与しているのかを明らかにすることができると考えている。今年度の研究の進展により、神経管閉鎖の分子メカニズムとSIP1の役割について、一定の成果をあげることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、今後、SIP1が細胞極性をどのように制御しているのか解析を進める予定である。SIP1ノックアウトマウスの細胞極性異常について、apical側タンパクであるPar3やbasolateral側タンパクであるLGLなど細胞極性に関与する分子について、神経管閉鎖不全時の細胞局在を解析し、正常胚と比較する。また、SIP1はBMPシグナリングを伝達するSmadと相互作用する分子であるため、SIP1ノックアウトマウスでSmadの核移行が正常に起こっているか否か、SIP1不在によるBMPシグナリングの異常がみられるかどうかについても検討する。さらに、ノックアウト胚と正常胚各々からRNAを抽出し、発現の差が見られる分子を解析する。発現の差が検出された遺伝子については、SIP1により発現制御を受けているか否かについてプロモーターアッセイを行い、さらに、胚における発現部位の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画においては、実体顕微鏡(850千円)、サーマルサイクラー(550千円)購入を予定していたが、研究室内の人員の増減により、既存のこれら備品機器が使用可能となったため、この計画を変更し、新たに必要となった抗体、試薬等消耗品費に充てている。平成23年度未使用見込額は700千円、次年度請求額は1200千円で、これを合わせた次年度所用見込額は合計1900千円となる。これらの費用の内訳として、ノックアウト胚及び正常胚からのRNA抽出と、その遺伝子発現解析にかかる試薬、及び解析費用に(400千円)、マウスの解析等に必要な抗体に400千円、免疫組織科学用試薬に200千円、分子生物学用試薬に500千円、学会発表、論文投稿費用に400千円を予定している。
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Research Products
(1 results)