2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒト未熟児網膜症発症における神経軸策誘導分子群の遺伝子変異に関する研究
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23791223
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三輪 明弘 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (70457076)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
未熟児網膜症(ROP)の発症・重症化と遺伝子変異・多型についての関連を明らかにするため、ROPが重症化した、在胎29週5日で出生した一絨毛膜二羊膜双胎の2児に対して検索を行った。検索した遺伝子は文献的にROPの重症化との関連が示唆されているNorrie disease protein (NDP), frizzled 4 (FZD4), low-density lipoprotein-related protein 5 (LRP5), Tetraspanin 12 (TSPAN12)の各遺伝子について行った。LRP5で複数のsynonymous polymorphic mutationを認めたが、各遺伝子とも既知・新規の遺伝子変異は認めなかった。そこでROPの重症化ともっとも関連が深いVascular endothelial growth factor (VEGF)について、既知の遺伝子多型の検索を行った。検索を行った遺伝子多型は-1498T>C, -1154G>A, -643C>G, -7C>T, 936C>T, そして1612G>Aについて直接シークエンス法を用いて検索を行ったところ日本人新生児のROP発症の危険因子と報告されている936C>Tのヘテロの遺伝子多型を両児に対して認めた。両児に関してはROP発症・重症化の危険因子として臨床的背景として双体間輸血症候群や、出生後の低血圧、出生後の長期の酸素投与、輸血やエリスロポエチン(EPO)の投与など多彩な危険因子が存在したことから、ROPの重症化を遺伝子多型単独の要因に帰することはできないが、ROP重症化の危険因子としてVEGFの遺伝子多型の存在が重要であることを示唆する貴重な症例と考えられ、今後さらに他の血管新生調節に関与する神経軸策因子やEPO遺伝子多型の関与を検索する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ROPと関連が示唆されている複数の遺伝子群に関して検体採取、臨床的背景の調査、直接シークエンス法を用いて遺伝子多型を調べる手法が確立できた。具体的には対象となる32週以前に出生となった早産児から出生後に臍帯、あるいは口腔粘膜より検体を採取し、市販のDNA抽出キットを使用しゲノムDNAを抽出することに関しては問題なく手法が確立できた。次に対象となった早産児の、ROP発症・重症化に関与すると思われる臨床背景を、母体要因、児の出生時要因、児の出生後要因別に、臨床記録より後方視的に抽出できた。母体要因としては(母体年齢、妊娠回数、分娩回数、母体の喫煙の有無、妊娠高血圧症の有無、切迫早産の有無、前期破水の有無、胎児機能不全の有無、羊膜絨毛膜炎の有無)について、出生時要因としては(性別、在胎週数、出生体重、多胎出生の有無、子宮内胎児発育不全の有無、アプガースコア1分値・5分値)について、出生後要因としては(サーファクタント投与回数、人工呼吸管理期間、酸素投与期間、慢性肺疾患の有無、未熟児無呼吸発作の有無、出生後ステロイド投与の有無、輸血の有無、エリスロポエチン投与の有無、動脈管開存症の有無、脳室内出血の有無、敗血症の有無)について抽出した。最後に既知のROPの重症化に関連する遺伝子群に対して直接シークエンス法を用いて遺伝子多型を調べる手法を確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後症例数を増やすために、32週以前に出生となった早産児から出生後に臍帯、あるいは口腔粘膜より検体を採取し、市販のDNA抽出キットを使用しゲノムDNAを抽出することを継続して行う予定である。またすでに抽出した臨床背景データをもとにROP群、非ROP群の2群間で臨床背景に有意差をもつ因子が存在するかを検討する。次に現時点では既出されていない遺伝子群に対して、直接シークエンス法を用いて遺伝子多型を検索する。その結果および臨床背景から抽出されたROP重症化因子を多変量解析を用いて有意差を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で行う各種実験は、既に代表者及び協力者の所属する研究室で頻繁に行われ、安定した成績を収めている。これらの実験を本研究で実施するにあたり、新たな設備備品を購入する必要はない。しかし、上記の研究を実施するにあたりDNA抽出キット、PCR用試薬、シークエンス用試薬等の各種試薬、各種消耗品、各種実験器具等が必要である。また国内外の研究状況を把握するためや情報交換のため、学会・会議に出席する必要がある。平成23年度では国内、国外共に学会発表を行わなかったため、次年度に繰り越しとなる使用額が発生した。このため、本研究の結果を、平成24年度に国内・国外を問わず学会で発表し、論文にまとめる予定である。よって、図書費や旅費等の経費を計上している。
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