2011 Fiscal Year Research-status Report
新生児低容量血液浄化器の安全性の確立:ブラジキニン、サイトカインの除去
Project/Area Number |
23791235
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
高田 彰 岩手医科大学, 医学部, 助教 (30438494)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ブラジキニン / サイトカイン / 新生児 / 腎代替療法 |
Research Abstract |
新生児に対して体外循環を用いた血液浄化療法を行う場合、相対的に体外循環血液量が多くなることから、あらかじめ保存血で回路内を充填する方法がとられる。海外産のポリアクリロニトリル膜を血液浄化器として使用した場合、この手技によってブラジキニンが産生されることが報告されており、患者に接続した後の血圧低下の原因の一つと考えられている。しかし、保存血は電解質やサイトカインなど非生理的性状であり、これが他の血液浄化器に接触した際にどのような変化を来すかが不明であり、これを検討するのが当研究の目的である。23年度は、現在、新生児に適応可能な低容量の血液浄化器として主に使用されているポリアクリロニトリル膜(膜面積0.1m2)とポリスルフォン膜(膜面積0.3m2)に関してブラジキニン濃度の検討を行った。ポリアクリロニトリル膜では異なる3人のドナー血を用いて検討した。保存血を浄化器に充填し、血液バッグを介して閉鎖回路とし、血液流量50ml/分で循環させた場合、ブラジキニン濃度は5分後に70.8pg/mlから299.3pg/mlへ上昇し(平均値)、以降30分間高値を維持した。一方、ポリスルフォン膜では、1人のドナー血の検討のみだが、保存血の充填によってブラジキニン濃度にほとんど変化を認めなかった(57.9pg/ml→40.4pg/ml)。以上から、ポリアクリロニトリル膜を使用する場合は、患者に回路を接続する前にこれを浄化する必要がある。そこで、同様に保存血充填後に閉鎖回路とし、血液流量50ml/分、透析液流量1,500ml/時、濾過流量500ml/時の条件で30分間血液濾過透析を行った場合、ブラジキニン濃度がすべて100pg/ml以下に低下した。一方、ポリスルフォン膜では酸性の保存血が接触してもブラジキニンは上昇しない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)本研究は臨床で用いる回路、血液浄化器と同様のものを用いるため、23年度は東日本大震災の影響で物品の納入が滞り、入手するのに時間を要した。(2)同様の理由で、企業からの血液浄化装置の借用が困難であった。(3)国産のポリアクリロニトリル膜であるAPFシリーズおよびボランティアから採血するための白血球除去フィルターが製造中止となり、研究計画の見直しが必要になった。
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Strategy for Future Research Activity |
国内でポリアクリロニトリル膜の製造が中止となったため、今後、新生児に使用される可能性のある0.3m2の低容量浄化器である、ポリスルフォン膜とポリメチルメタクリレート膜に的を絞って、ブラジキニンおよびサイトカインの動態およびその浄化条件を検討する。具体的にはまず、2種類の血液浄化器を用いて血液充填した際のサイトカインの動態のパイロット研究を行う。その動態を確認後、事前透析を行った時のそれらのブラジキニンとサイトカインの変化を調べるため、血液充填と回路循環をまとめて行い、検体を採取する。検体の測定はまとめて行い、その傾向を見て、事前透析の条件の調節を行うことで、研究時間の短縮を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ブラジキニン濃度はRIA法、各種サイトカイン濃度はELISA法で測定するため、研究費の主をその測定用試薬の購入にあてる。濃厚赤血球作製前に白血球除去を行う採血バックが製造中止となったため、新たに必要となる白血球除去フィルター、また透析に必要な備品に、その残をあてる予定である。
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