2011 Fiscal Year Research-status Report
新生仔低酸素脳症の治療法としての大気圧プラズマの有用性
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23791237
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
近藤 朱音 東海大学, 医学部, 講師 (00384884)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 虚血後脳症 / 新生児仮死 / 大気圧プラズマ |
Research Abstract |
これまでの我々の研究では「プラズマ吸入が血管新生を促進すること」については明らかにしていたが、プラズマの吸入から実際に血管新生が起こる過程でどのようなことが起こっているのか、については不明であった。今年度はこれまでの研究で用いていた動物モデル同様にラットの脳虚血モデルを作成し、大気圧プラズマの吸入が及ぼす影響について検討を重ねた。<研究の方法>(1)虚血モデルは出生後1-2日に右総頚動脈を結紮して行った。(2)虚血後は経時的に脳切片を作成し、虚血辺縁部の血管数を測定した。(3)機能血管数を計測するためトマトレクチンを心腔内投与して識別した。組織観察は蛍光抗体法を用い、共焦点レーザー顕微鏡下に行った。治療群では虚血後24時間後より大気圧プラズマ吸入を連日行い(印加電圧:5KV、周波数:3kHz、Heガス流量:1L/min)、未治療群と比較 検討した。(4)大気圧プラズマ吸入時のラット血中NO値を血管内センサーを留置することで経時的に測定することが可能となり、その変化について検討した。<結果>(1)虚血後に大気圧プラズマを吸入した群において有意に血管新生が促進されていることが再現された。(2)大気圧プラズマを吸入するとすぐに血中NO値が上昇し、吸入をやめるとNO値は低下した。<考察>これまで明らかになっていなかったプラズマ吸入の作用としてNOの発生があることが明らかになった。NOは既に血管新生に働くことが明らかとなっており、本研究の臨床応用を考慮すると大変有意義な結果が得られたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の大きな前進はこれまであまり明らかになっていない大気圧プラズマの作用機序の一部が明らかになったことである。既に多くの分野で研究されており、その使用実績から皮膚への照射などを中心に生体への使用も臨床応用されつつあるものの、詳細な機序についてはまだ明らかにされていなかった。今年度の研究として我々は昨年同様の研究モデルとして新生仔ラットを用いた脳虚血モデルに大気圧プラズマを吸入させて血管新生が行われる際の生体への影響を検討した。新生仔ラットの血管内に留置することが可能であるNOセンサーを使用し、大気圧プラズマ吸入中の血中のNO値を経時的に測定した。本研究の結果より大気圧プラズマの吸入が血中NOを増加させることが判明し、これは虚血脳における血管新生に作用していることが想定された。大気圧プラズマの吸入量や吸入時間とNO値の関連性、また治療効果との関連性などについては今後検討の予定である。また大気圧プラズマ吸入による血管新生については今回の研究を通して再現性があることを観察することが可能であり、同時に当初研究をすすめる予定であった血管新生後の神経細胞の増殖などについても現在検討中である。山羊などを用いた大動物での研究においては血管内に留置するセンサーなども含めて改めて検討しており今年度後半には具体的な検討をすすめることができるように準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
脳組織の評価の点において次の段階としては機能血管数の増加だけでなく、神経細胞の増殖を確認することが有意義であると考えられ、機能血管数増加の後も治療を継続し、最終的に神経細胞が増殖することについて明らかにしていきたい。また現時点での大気圧プラズマによる治療は1時間/日のみであったため。その量や期間を増加あるいは延長することによる治療の有効性の有無についても検討する予定である。また山羊などの大動物においても虚血モデルの作成を検討し、体重に相当する大気圧プラズマを用いて治療し、その有効性についても検討していきたい。大動物を用いる利点としては大気圧プラズマ治療による機能的な改善の評価が可能となることであるため、組織学的な評価だけでなく、歩行などの運動神経についての評価も行う。さらに大動物のモデルにおいては少量ではあるが臍帯血の採取が可能であるため、臍帯血中の幹細胞を用いた研究もすすめていきたい。これまでの我々の研究にて大気圧プラズマを照射することで細胞増殖が起こることが明らかとなっている。今回は臍帯血中の幹細胞を選択的に集め、大気圧プラズマを照射することでその増殖を促し、増殖した幹細胞を用いた虚血の治療の検討につなげていきたいと考える。脳虚血に対する自己臍帯血輸血治療は海外では既に行われており、自己臍帯血中の幹細胞を十分に治療に使用できることは臨床的にも有意義であると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度より使用しているNOを測定するためのセンサーが高額であるため、センサーの他は主に動物実験に必要な試薬やデータ処理や記録などに必要となる消耗品に使用することとなる。また今年度は学会発表やより臨床に近づいた研究を目指すためにプラズマ医学の研修会などへの積極的な参加についても検討している。
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