2011 Fiscal Year Research-status Report
出生時低体重児にみられるストレスに対する脆弱性への非翻訳RNA発現異常の関与
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23791238
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
根本 崇宏 日本医科大学, 医学部, 講師 (40366654)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 低出生体重 / マイクロRNA / ストレス / 下垂体 / HPA軸 |
Research Abstract |
出生時低体重児は成長後に鬱や自閉症、統合失調、注意欠陥多動性障害を呈する可能性が高い。これらの疾患ではHPA軸の異常が知られているが、その機序への下垂体の関与は明らかにされていない。そこで胎児期の低栄養による出生時低体重のHPA軸の異常の関与の可能性を検討することを目的に、妊娠中に摂取カロリー制限をした母ラットからの出生仔を用いて、HPA軸の変化を解析した。妊娠中の摂餌量を対照ラットの60%に制限した母ラットからの出生時低体重仔 (LBW) では拘束ストレス負荷後の血中ACTHおよびコルチコステロン、下垂体でのPOMC mRNA発現量の高値維持と、CRF 1型受容体 (CRF-R1) のmRNAとタンパク質の発現量の下方制御の異常がみられた。データベース検索によりCRF-R1の発現を負に制御するmiRNAのmiR-449aを見いだし、それがラットの下垂体に発現し、対照ラットではストレス負荷後にその発現が下垂体で増加するが、LBWではこれらの増加がみられないこと、miR-449aの発現はin vitroではCRFには反応しないがデキサメタゾンによりその発現が増すこと、副腎摘除ラットではストレス負荷後の下垂体でのmiR-449aの発現増加が消失すること、miR-449aの過剰発現によりCRF-R1のmRNAとタンパク質の発現が減少し、ノックダウンによりデキサメタゾンによるCRF-R1の発現の低下が阻止されること、3’非翻訳領域分解活性がmiR-449aの共発現で上昇することからmiR-449aがCRF-R1の発現調節に関与することを明らかにした。以上、出生時低体重仔でHPA軸の異常が生じる機序に下垂体のmiRNAによるCRF-R1の下方制御の消失が関与することを明らかにした。さらに、この機序にLBWでは下垂体でのGas5 ncRNA発現の上昇が関与する事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は実験計画で目的としていたmiR-449aによるCRF-R1のmRNAとタンパク質の発現調節機構が存在することを明らかにし、ストレスにより増加したグルココルチコイドがmiR-449aの発現を調節すること、LBWではGas5の発現の上昇が生じているためにグルココルチコイドによるmiR-449aの発現調節の異常が見られることを明らかにした。さらに、次年度実験を計画していた血中エクソソーム内のmiR-449aの検出にも成功し、ストレス負荷LBWラットでは、対照ラットで見られた末梢血エクソソーム内のmiR-449a含量の増加が見られないことも明らかにした。一方、LBWでGas5の発現が上昇した機序は未だに不明であるため、次年度に向けてこの機序の解明を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度作成が完了しなかった、miR-322の機能を阻止するデコイを発現する組換えアデノウイルスを作成し、SGA-NCGラット仔に投与することにより、追いつき成長を示せるようになるか、検討を行う。なお、アデノウイルスは尾静脈に投与することにより、そのほとんどが肝臓に感染させることが可能との報告もあるため、本研究でも同様の手法を用いる予定である。 LBWラットの下垂体でGas5の発現が上昇した機序を明らかにするため、Gas5をコードするDNAのメチル化の解析を行う。現在、バイサルファイトシークエンシング法でどの領域のメチル化が変化するかの検討を行っている。メチル化の変化が見られる領域が特定できたならば、今後は多くの検体数を解析することができるmethylation specific PCR法を用いた解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究は既存の設備や機器で行うことができるが、多くの研究試薬や機材が必要となるため、この多くを消耗品費として使用する予定である。また、昨年度までの成果を一部発表し、さらに情報収集を行うために旅費・交通費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)