2012 Fiscal Year Annual Research Report
全身性強皮症に伴う血管障害の発症機序におけるエンドセリンの意義
Project/Area Number |
23791256
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅野 善英 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60313029)
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Keywords | 全身性強皮症 / 血管障害 / 創傷治癒 / エンドセリン / Fli1 |
Research Abstract |
平成23年度の研究成果 培養ヒト皮膚血管内皮細胞(human dermal microvascular endothelial cells: HDMECs)において、ET-1はc-AblとPKC-delaの活性化を介して転写因子Fli1をリン酸化し、そのDNA結合能を低下させた。一方、HDMECsをボセンタン(ET受容体拮抗薬)で処理すると、c-AblとPKC-deltaの活性が抑制され、その結果Fli1は脱リン酸化し、DNA結合能は亢進した。我々はこれまでに、血管内皮細胞特異的Fli1欠失(Fli1 ECKO)マウスでは強皮症に伴う血管障害に特徴的とされる皮膚小血管の病理組織学的変化や機能異常を再現できることを明らかにし、Fli1の恒常的な発現低下が強皮症の血管障害の発症に密接に関与している可能性を明らかにしてきた。そこで、Fli1 ECKOマウスにボセンタンを4週間腹腔内投与したところ、血管透過性の異常や皮膚小血管の構造異常は改善した(構造異常については平成24年度の成果)。 平成24年度の研究成果 野生型マウスの創傷治癒はボセンタンにより遅延したが、Fli1 ECKOマウスにおける創傷治癒遅延に対してはボセンタンは有意な影響を及ぼさなかった。現在、ボセンタンの投与がFli1 ECKOマウスの各種潰瘍治療薬への反応性に影響を及ぼすか否かについて検討中である。 全体の研究を通じての結論 欧米で行われたRAPIDS1, RAPIDS2試験では、ボセンタンは強皮症患者の指尖潰瘍の治癒を促す効果はないと報告されているが、本研究の結果は同試験の結果を支持する結果となった。以上の結果より、ボセンタンは強皮症に内在するFli1依存性の血管障害を改善することによって皮膚潰瘍の新生を抑制している可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)