2011 Fiscal Year Research-status Report
環境化学物質レセプターAhRがアトピー性皮膚炎に果たす役割の解明
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23791262
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小川 英作 信州大学, 医学部, 助教 (20451586)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / AhR |
Research Abstract |
本研究では、ダイオキシンなど芳香族炭化水素類に対する細胞のレセプターであるaryl hydrocarbon receptor(AhR)のシグナルに着目して、アトピー性皮膚炎の病態を解明する事を目的としている。そこで、AhRを介した皮膚炎惹起のメカニズムの解析を、まず、AhRを過剰発現させたマウスの培養表皮細胞とトランスジェニックマウスを用いて、DNAマイクロアレイの手法で、網羅的に調べた。そこでは、アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患に関連する様々なサイトカインの発現変化を認めた。最近の報告で、アレルギー疾患である気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎などと関連あるとされるサイトカインであるインターロイキン33(IL-33)とthymic stromal lymphopoietin(TSLP)の発現が上昇している事に着目して、具体的に解析を進めた。AhRを過剰発現させたマウスの培養表皮細胞から、検体を採取し、リアルタイムPCR法とウェスタンブロット法を用いて、mRNAとタンパク質の定量を行った。すると、IL-33とTSLPが、mRNAレベルでもタンパク質レベルでも、上昇している事が確かめられた。つまり、AhRが活性化していると、IL-33とTSLPの発現が上昇する事をin vitroで確かめた。現時点では、AhRが、IL-33やTSLPを通して、アトピー性皮膚炎の病態形成に役目を果たしているのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の具体的目標は、まずAhRによって惹起されるアトピー性皮膚炎ではどのような因子に変化が起こっているかを見つけ、実際に重要な因子を絞り、in vivo及びin vitroで確認する事である。次に、AhRは転写因子であるため、どのようなメカニズムでアトピー性皮膚炎を引き起こす因子を変化させているかを解明しなければいけない。さらに、AhRトランスジェニックマウスで起こっている皮膚炎をAhRを抑制すると押さえる事ができるか確かめたいと考えている。そのうち、最も難しいと考えられる最初の段階である、AhRによって惹起される皮膚炎で重要な役割を担っている可能性のある因子を2つに絞る事ができ、その2つの発現も解析できた。しかし、それ以降の研究もマウスを用いるため時間のかかる事が予想されるため、厳しめな自己評価として、達成度はやや遅いのではないかと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で達成された事は、AhRが活性化した表皮では、様々な炎症性サイトカインが変化する事がDNAアレイでわかり、その中でIL-33とTSLPに見当をつけ、実際にAhRが過剰発現すると、IL-33とTSLPの上昇がin vivoとin vitro両方で確かめられたという事である。よって今後は、AhRは、転写因子であるため、どのようなメカニズムでアトピー性皮膚炎を引き起こす因子を変化させているかを解明して、AhRを過剰発現したマウス培養表皮細胞でのIL-33やTSLPの過剰発現がAhRを抑制する事で押さえられるか、さらにAhRトランスジェニックマウスで起こっている皮膚炎もAhRを抑制すると押さえる事ができるか確かめたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
AhRのアクチベーターを表皮細胞に添加して、IL-33やTSLPを解析する。さらにAhRは活性化すると核内に移行して、転写因子として作用するので、IL-33やTSLPの転写を実際に調節しているかどうかを、ChIPアッセイやレポーターアッセイを用いて確かめる。AhRを過剰発現させたり、AhRのアクチベーターを添加したりした後、AhRを抑制するとIL-33やTSLPが抑制されるかを検討する。AhRトランスジェニックマウスに、AhRの中和抗体やインヒビターを投与して、実際に皮膚炎が抑制されるかどうかを、皮膚組織や血液を検体として、IL-33やTSLPや他の炎症サイトカインの発現を解析する。そのため、AhRのアクチベーターとインヒビター、ChIPアッセイ用およびレポーターアッセイ用試薬、AhR抗体(とくに中和抗体)の新たな購入が必要である。当初計画時より、注文納品が遅くなったため、次年度使用額が生じた。研究の進展については、信州大学皮膚科奥山隆平教授やAhRトランスジェニックマウスを供与頂いた東北大学医学部医学系研究科医化学分野山本雅之教授やその教室の先生方と意見交換しつつ計画を進めていく。
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