2011 Fiscal Year Research-status Report
Periostinに着目した全身性強皮症の病態解析
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23791284
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
山口 由衣 横浜市立大学, 医学部, 助教 (60585264)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 線維化 / 強皮症 / 細胞外マトリックス |
Research Abstract |
分泌型、IL13誘導型の細胞外マトリックスであるPeriostinは、matricellular proteinとも呼ばれ、組織構築のマトリックスとしてだけではなく、細胞の活性および機能調節に直接的に重要な役割を果たすことが知られている。今年度は、全身性強皮症の病態におけるPeriostinの役割を検討するため、まずは患者血清および組織におけるPeriostinの発現と臨床的側面との相関を調べた。56名の全身性強皮症患者(diffuse type 16名、limited type 40名)、および健常人66名における血清のPeriostin値をELISAで測定したところ、強皮症患者全体で、健常人に比較して有意に上昇していた。特に、diffuse型の患者で高値であり、皮膚硬化の重症度(スキンスコア:TSS)と有意な相関を示した。また、発症早期例の浮腫期で高値であり、経時的なサンプルの検討でTSSとの相関を認めた。以上より、Periostinが強皮症の線維化病態形成に重要な役割を果たすことが示唆された。一方で、TSS低値のlimited typeの強皮症患者においても、健常人に比較して、血清Periostin値は有意に上昇しており、Periostinが線維化だけではなく、おそらくは血管障害や創傷治癒における組織のリモデリングなどに関与することが想定された。また、強皮症患者皮膚を用いた免疫組織学的検討では、Periostinは真皮上層から深層まで非常に強く染色され、血清Periostin値とも相関した。これらの結果より、血清Periostin値が、臨床的にも線維化指標の重要なマーカーと成り得ると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究室内の機械の故障、修理、セットアップを含めてプロジェクト開始に時間がかかった。現在はラボの環境も整い、順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの結果より、Periostinが全身性強皮症患者の血清および組織で高発現し、その程度が皮膚線維化の重症度と相関することが示された。しかし、Periostinがどのようにその病態形成に関わるかは不明である。今後の研究は、Periostinがその主要なソースである線維芽細胞および末梢血免疫細胞へ相互に与える影響に焦点をあてる。まずは、強皮症患者の肺、皮膚の線維芽細胞を一次培養し、そのPeriostin産生をみるほか、Periostinが線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化転換、ケモカイン・サイトカイン産生に与える影響を検討する。また、Periostinはインテグリンと結合することが知られており、末梢血単核球とのクロストークについても解析する。つまり、Periostin刺激による末梢血単核球のフェノタイプ変化の有無の解析、細胞の活性化状態の変化などを検討し、強皮症の病態形成への関与を追究する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養関連試薬のほか、ELISAや免疫染色、フローサイトメトリーなどに使用する抗体を含めた試薬類が主要な使用用途である。また、線維芽細胞や末梢血単核球を用いて、Periostin刺激によるサイトカイン、ケモカイン産生を遺伝子レベルで網羅的に解析する予定であり、主要な研究費の使用用途となる。
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