2012 Fiscal Year Annual Research Report
ファージ提示法を基礎技術とした天疱瘡における自己抗体の解析
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23791291
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山上 淳 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80327618)
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Keywords | 天疱瘡 / 自己抗体 / 自己免疫 |
Research Abstract |
研究期間中に、ファージ提示法を用いてヒトおよびマウスから天疱瘡の自己抗原であるデスモグレイン(Dsg)の前駆体(preDsg)に対するモノクローナル抗体の単離、その特徴からpreDsg特異的B細胞の解析をめざすとともに、天疱瘡患者および健常人におけるpreDsgに対する自己抗体の解析を進めた。 落葉状天疱瘡(pemphigus foliaceus; PF)を風土病とするチュニジアの一部では、健常人からDsg1に対する自己抗体がELISAで検出される。CHO細胞で作成した前駆体preDsg1と成熟体matDsg1の組み換えタンパクを用いて、チュニジアの健常人および風土病型PF患者、日本人の通常型PF患者血清の反応性を評価した。チュニジア健常人血清は、preDsg1に対してmatDsg1よりも強い結合性を示した一方で、PF血清はpreDsg1とmatDsg1に同等もしくはmatDsg1により強い反応性を示した。この結果は、健常人においてもpreDsg特異的B細胞が消去されずに存在するという、近年の研究から導かれる概念を支持しており、さらに状況によりpreDsgに対する自己抗体も産生されることを意味している。 また、95名の天疱瘡患者においてpreDsgに対する自己抗体を調査したところ、落葉状天疱瘡、尋常性天疱瘡とも、90%以上の患者でpreDsgに対する抗体が検出された。ただしmatDsgで吸収した後の血清では、preDsg3に対する反応は91%、preDsg1に対する反応は86%が消失した。以上から、通常型天疱瘡患者においてpreDsgのみに反応する抗体の保有率は低いことが判明したが、preDsgと反応する抗体を取り除くことで、病原性のある自己抗体を鋭敏に検出する評価系を樹立できる可能性がある。 以上、主にpreDsgに対する自己抗体に関して有意義な研究を行うことができた。
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