2011 Fiscal Year Research-status Report
悪性黒色腫で特異的に発現するHistatin-1の機能解析、診断、治療への応用
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23791293
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷口 智憲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40424163)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 悪性黒色腫 |
Research Abstract |
Histatin-1(HTN-1)は、唾液腺にのみに発現しているペプチドであるが、我々は、この分子がヒト悪性黒色腫に発現し、浸潤転移に関与している事、免疫抑制活性を有している可能性を見出した。本研究では、悪性黒色腫で発現しているHTN-1の意義を解析する。具体的には、(1)HTN-1が悪性黒色腫の浸潤・転移・免疫抑制などに関与しているか、(2)組織、血中のHTN-1を測定し、悪性黒色腫の診断、予後マーカーとして使用できるか、(3)HTN-1が治療の標的となるか、(4)HTN-1の免疫抑制活性のメカニズムは何か、について検討する。HTN-1のmRNAはヒト悪性黒色腫細胞株の約半数に発現が認められた。ヒト悪性黒色腫組織でHTN-1遺伝子の発現量と患者の予後との相関を解析した所、HTN-1高発現群は低発現群に比較して、有意に予後不良であることが分かった。HTN-1遺伝子のノックアウト実験、強制発現実験、および合成HTN-1ペプチド添加実験では、HTN-1はヒト悪性黒色腫の細胞移動能をin vitroで亢進させた。ヒト単球由来樹状細胞(Mo-DC)にHTN-1を添加すると(HTN-DC)、活性化表面マーカー(CD80, CD83, CD86)やMHC class II分子の発現には著変を認めなかったが、炎症性サイトカインの産生低下、免疫抑制性サイトカインの産生亢進を認め、T細胞に対する活性能がMo-DCに比較して著しく低下していた。HTN-DCとMo-DCの発現遺伝子をGene Chipを用いて網羅的に解析した結果、両者で発現遺伝子が大きく異なり、IL10などのHTN-DCで高発現する遺伝子を発見し、その意義を現在解析中である。以上より、HTN-1はヒト悪性黒色腫で、浸潤転移、免疫抑制の両方に関与し、患者の予後にも影響を及ぼす可能性がある事が分かり、治療標的として有望であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、1. HTN-1発現と臨床病理学的因子との相関を、ヒト臨床検体を用いて解析する事、2. HTN-1が悪性黒色腫の細胞遊走能に関与するメカニズムの解析、3. HTN-1が免疫担当細胞へ及ぼす影響の解析、の主に3つを施行する予定であったが、おおむねどの項目に対しても取り組むことができ、実験結果を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、主に以下の5点に関して進める。1. HTN-1発現と臨床病理学的因子との相関に関しては、HTN-1はDCを抑制し、免疫抑制を誘導する可能性があるので、癌組織に浸潤している免疫細胞を免疫染色で解析しその浸潤数とHTN-1発現の相関を解析する。また、HTN-1は、癌化のマーカーとして使用できる可能性もあるため、母斑などの良性疾患に関してもHTN-1の発現を解析する。また、HTN-1の癌組織での免疫染色を試みる。2. HTN-1が悪性黒色腫の細胞遊走能に関与するメカニズムの解析に関しては、ヒト悪性黒色腫でHTN-1を強制発現させたりノックダウンすることで発現量が変動する遺伝子をGene Chipを用いて網羅的に解析し、細胞遊走に関わる責任遺伝子を同定する。3. HTN-1が免疫担当細胞へ及ぼす影響の解析に関しては、今年度施行したGene Chipの結果より、HTN-1-DCの発現遺伝子を解析し、正常DCと比べ、免疫抑制を司る分子を同定する。4. 悪性黒色腫患者血清中のHTN-1の測定系の確立に関しては、ELISAによる測定系の確立をめざし、患者の血清を用いてHTN-1の検出を試み、同様に臨床病理学的因子との相関を検討する。5. HTN-1をターゲットとした治療法の開発に関しては、HTN-1をターゲットとした転移予防や免疫抑制解除を目的とした治療法の開発をマウスモデルを用いて行う。HTN-1はマウスでは発現していないためHTN-1を強制発現したりノックダウンしたヒト悪性黒色腫をヌードマウスに移植する。この実験において、転移の程度や、脾臓、腫瘍組織中のDCやMDSCの機能を評価し、HTN-1がin vivoでも癌の転移、免疫逃避に関与しているかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は主に消耗品、旅費、論文投稿料などに使用予定である。消耗品としては、HTN-1のELISAや免疫染色に使用可能な抗体の購入、及びその作製費、免疫染色キットの購入、Gene Chipの購入、動物実験のための動物購入と飼育費、シャーレなどの一般的な培養の為の試薬と器具の購入、プライマーなどの一般的な分子生物学的実験の為の試薬と器具の購入に使用する。旅費は、本研究の成果発表の為、癌学会や免疫学会をはじめとする国内外の学会の参加のために使用する。
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[Presentation] Role of IL6/IL8-NF-KB AXIS in the Immunosuppression and resistance to immunotherapy2011
Author(s)
Yutaka Kawakami, Hiroshi Nishio, Tomonori Yaguchi, Yoshie Kawase, Azusa Ohizumi, Shinobu Noji, Toshiharu Sakurai, Kazuo Umezawa, Tomonobu Fujita
Organizer
26th Annual Meeting Society for Immunotherapy of Cancer
Place of Presentation
North Bethesda, MD, USA
Year and Date
2011 – 114-116
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