2011 Fiscal Year Research-status Report
非メラノサイト病変を含むメラノーマ自動診断支援システムの開発
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23791295
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
彌冨 仁 法政大学, 理工学部, 准教授 (10386336)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
我々は、これまで皮膚科専門医でも識別が難しいメラノーマと、一般にほくろと呼ばれる色素細胞母斑(ともにメラノサイト病変 melanocytic skin lesions: MSL)を識別できる自動診断支援システムを開発し、改良を重ねてきた。システムは、ネットの利便性を活かし世界各国から利用されている。今後システムの利用者を皮膚科専門医以外の医師に拡大することを考えた場合に、これまで研究対象になってこなかった、MSL以外の一般の皮膚腫瘍(非メラノサイト病変: non melanocytic skin lesions: noMSL)もメラノーマと正しく識別できる能力を持たせることが必要である。今年度は、研究計画の前半部分のダーモスコピー画像(皮膚科医が用いる拡大鏡)からの正確な腫瘍領域抽出手法の開発に取り組み、英文原著論文2編の成果を上げた。メラノーマ等の皮膚腫瘍の自動識別を行うためには、腫瘍辺領域の特徴が極めて重要なため腫瘍領域の特定は大変重要な課題である。しかしnoMSLは種類が多く病変の容態が多様で、また境界不明瞭な腫瘍が多い。そのため完全自動化された病変抽出アルゴリズムの開発は容易ではなく、申請者が知る限り研究成果は見当たらない。そこで本研究では、noMSLにも対応した正確で頑健な腫瘍領域抽出法を開発した。本研究の実施により、既存のMSL病変およびnoMSL病変双方に対し正確な腫瘍領域特定が可能な手法を開発した。本手法は、2006年から2010年までに論文で公開されている5種の皮膚腫瘍抽出アルゴリズムと比較してnoMSL病変で1位、MSL病変の精度で2位(既存の我々の方法が1位)の精度を実現し、成果はSkin Research and Technology誌に掲載された。またMSL病変についても新たな腫瘍抽出アルゴリズムを開発し、こちらも同論文誌に掲載が決まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、非メラノサイト病変(noMSL)を含むメラノーマ自動診断支援システム実現のために、(1) メラノサイト病変(MSL)およびnoMSLを90%以上の精度で識別できる識別器の構築、および(2)そのために必要な腫瘍領域の抽出が難しいnoMSLに対しても皮膚科医と同等の結果が得られる腫瘍領域特定アルゴリズムの開発を目標とし研究を行ってきた。2011年度の研究では主に(2)について取り組み、MSL, noMSL双方に対して、近年論文誌で公開されている最近5つの方法よりも優れ、熟練皮膚科医と同等と見なせるアルゴリズムが開発できた。これにより原著論文2本の成果を得ることができ当初の目標は順調に実現できたと考えられる。 残りの識別器開発についても、2011年度中にこれまでの研究により得られた識別に関する枠組みが利用し、目標の達成が実現できる見通しが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年度に得られた、ダーモスコピー画像からの腫瘍領域抽出アルゴリズムの成果を用いてnoMSL病変の解析が出来るようになると、既存のMSL病変の識別システム(色素細胞母斑とメラノーマの識別システム)とあわせて、一般的な様々な種類の皮膚病変の入力に対してメラノーマの検出が可能になり、システムが研究レベルから実用化レベルへと大きな進歩を遂げることが出来る。これまでの研究において、腫瘍領域が正しく抽出できた場合に高い精度でダーモスコピー画像を分類できる枠組みを我々は持っているので、2012年度はnoMSLに対してこれを応用して総合的な識別システムの開発を行う。具体的には、腫瘍抽出結果を得た後、 (A)腫瘍内外の画像から、臨床現場で用いられる指標を参考に、従来の研究で診断に重要だと考えられるパラメータを画像ごとに、腫瘍内部(T: tumor)、腫瘍辺縁 (P: peripheral)および、健常部位(N: normal) との差など、各領域ごとに多数抽出する。(B)千数百例の診断が確定した症例を用い、これらのパラメータのうち、どの特徴が本テーマの分類に効果的かを、統計的な手法で選択し、医学的知見に基づく検証の上決定する。(C)基礎的な線形モデルで診断精度の検証の後、人工神経回路網(artificial neural network)もしくは、サポートベクタマシン識別器などの高度な識別器の作成を行う。良好な識別器が構成できた後、単にそれらを利用するだけではなく、識別に特に効果的な特徴については、医学分野に改めてフィードバックすること(「区別のためには○○を見つけよ」という新たな指針の提供)を目指し、臨床現場での貢献も視野に入れる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費:重要な画像特徴量の探索、頑健な識別器の開発、また特に画像数が合計で1500を超える状態での画像特徴フィルタ設計(最適化問題)には大変大きな計算能力が必要になり、計算能力は大きいほど望ましく現状を考慮すると更新が必須である。これまでの研究から比較的安価な計算機を並列に接続し運用する方がコストパフォーマンスに優れることがわかっているため、複数台消耗品として計上した。メインの開発を行う備品のワークステーションは、診断サーバに転用予定であり、ダウンタイムをできるだけ低減するために高信頼、高速のマシンを選定した。旅費:昨年度申請者独自の研究室が出来、今年度から研究室の大学院生にも本研究課題に対して研究成果が見込まれることから、2011年度の基金の残金を利用するなど、従来より多くの金額を旅費として計上した。謝金:実際のシステム運用や、データの基礎加工などの学生アルバイト代を、これまでの実施額に基づいて計上した。その他:英語校正、学会参加費、別刷り印刷費などについても、従来の実績に基づき計上した。
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Research Products
(6 results)