2011 Fiscal Year Research-status Report
表皮細胞内カルシウム濃度の調節:3種のカルシウムポンプの機能協調と角化への関与
Project/Area Number |
23791298
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
濱田 尚宏 久留米大学, 医学部, 講師 (40320204)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 単一遺伝子病 / 遺伝性皮膚疾患 / カルシウムポンプ / 皮膚病理学 |
Research Abstract |
小胞体や形質膜、ゴルジ装置に存在する3種のカルシウムポンプは協調しながら細胞内Ca2+濃度を調節している。研究代表者は、カルシウムポンプの異常で生じる遺伝性角化症であるHailey-Hailey病(HHD)とDarier病(DD)の症例を数多く収集し遺伝子変異を検出してきた。本研究は3種のカルシウムポンプが表皮細胞内Ca2+濃度の恒常性維持にそれぞれどの程度寄与しているのかを明らかにし、角化との関連性を調べることを目的としている。(本研究の具体的な内容)1, HHDとDDの培養表皮細胞における3種のカルシウムポンプ(SERCA、PMCA、SPCA)の発現を調べ、細胞内Ca2+濃度を測定する。 2, HHDとDDの培養表皮細胞で様々なパターンで3種カルシウムポンプをノックダウンし、細胞内Ca2+濃度を測定する。 3, 培養細胞から三次元培養皮膚を作製し、角化関連分子の発現を調べる。(これまでの研究経過と結果)1, 本研究の基盤となるHHDを30家系収集し、29種のATP2C21遺伝子(SPCA1)変異を新たに同定した。 2, HHD培養表皮細胞における3種のカルシウムポンプの発現は様々なパターンを呈したが、重症例では全ての発現低下を認めた。また ATP添加にて細胞内Ca2+濃度の上昇はみられなかった。 3, HHD培養表皮細胞では、カルシウム結合タンパク質のひとつであるcalmodulin-like 5や角化関連タンパク質であるloricrinの発現 が上昇し、病態との関連性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の具体的な目的は以下の項目である。1, HHDとDDの培養表皮細胞における3種のカルシウムポンプ(SERCA、PMCA、SPCA)の発現を調べ、細胞内Ca2+濃度を測定する。 2, HHDとDDの培養表皮細胞で様々なパターンで3種カルシウムポンプをノックダウンし、細胞内Ca2+濃度を測定する。 3, 培養細胞から三次元培養皮膚を作製し、角化関連分子の発現を調べる。上記についての、これまでの研究経過と達成度1,本研究の基盤となるHHDの家系を新たに30家系収集し、培養表皮細胞をいくつか保存することができた。それらにおけるSERCA、PMCA、SPCAの3種カルシウムポンプの発現パターンは様々であったが、ATP2C1ナンセンス変異を呈した重症例では全てのカルシウムポンプの発現低下を認めた。また、全ての培養細胞はATP添加にて細胞内Ca2+濃度の上昇がみられないことを確認した。また、HHD培養表皮細胞におけるカルシウム結合タンパク質や角化関連タンパク質の発現を調べ、病態との関連を推察した。 2,HHD培養表皮細胞において3種のカルシウムポンプをノックダウンする研究の予備実験といsて、HaCaT細胞を用いた同様の実験に成功しており、今後この手法を用いて研究を進める。 3,本研究のもうひとつの基盤となるDDについては、新規症例を収集できておらず、培養表皮細胞を得ることができていない。しかし、培養表皮細胞を得ることができれば、平成23年度に施行したHHDと同様の手法を用いて研究を円滑に進めることができると考えられる。 4,培養細胞から三次元培養皮膚を作製することは、平成24年度の研究目標にしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1,今後、特にDD患者からの培養表皮細胞樹立が必要である。研究代表者らのグループは、従来から遺伝性皮膚疾患についての研究と専門外来による診療活動を行いつつ、国内外の施設との共同研究にも参加し、数多くの論文を発表してきた。これらの経験をもとにして、他施設からのサンプル供与を中心に積極的な活動に努める。2, HaCaT細胞で3種のカルシウムポンプをノックダウンすることに成功した研究を基盤として、HHDとDDの培養表皮細胞において、様々なパターンでカルシウムポンプをノックダウンする。また、それぞれの培養細胞ではATP添加による細胞内Ca2+濃度の変化を観察する。これらの 研究の方法は確立されており、全て円滑に進めることができると考えられる。3, 3種のカルシウムポンプが様々なパターンで機能低下する培養表皮細胞を用いて三次元培養皮膚を樹立し、それぞれに認められる特異的な角化異常を明らかにする。三次元培養皮膚の作製にはCELLnTEC社のキットを用いる。樹立された三次元培養皮膚は、まずHE染色により表皮細胞接着障害や角化異常などの形態を観察する。続いてデスモグレインやデスモコリンなどの接着分子、ケラチンやインボルクリンなどの角化マーカーの発現についてリアルタイムPCRやウエスタンブロットで定量し、免疫組織染色により発現様式を観察する。4, 最近、三次元培養皮膚をモデルとして使用した遺伝性皮膚疾患の研究についての報告がみられる(Oji V et al. Am J Hum Genet 2010)。患者検体を使った三次元培養皮膚を樹立し、研究を進めることは手法としては簡便かつ迅速である。三次元培養皮膚の作製にはCELLnTEC社のキットを用いる予定であるが、上手くいかない場合には他社のキットを使用するなどして対応する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1, 設備備品の購入予定は当初からない。消耗品として、ノックダウン実験やリアルタイムPCR、ダイレクトシークエンスに用いる分子生物学実験試薬を40万円、分子生物学実験器具を25万円、表皮細胞培養試薬を10万円、三次元培養皮膚作製に必要な試薬を35万円、細胞培養実験器具を10万円の使用を計画している。2, 旅費などについては、外国で開催される国際学会での発表のために60万円、研究成果の英文論文の校閲に20万円 の使用を計画している。
|
-
-
[Journal Article] Atypical epidermolysis bullosa simplex with a missense keratin 14 mutation p.Arg125Cys.2011
Author(s)
Tsuruta D, Sowa J, Tateishi C, Obase Y, Tsubura A, Fukumoto T, Ishii M, Kobayashi H, Sakaguchi S, Hashimoto T, Hamada T.
-
Journal Title
J Dermatol
Volume: 38(12)
Pages: 1177-1179
DOI
Peer Reviewed
-
-
-