2011 Fiscal Year Research-status Report
IEN型IgA天疱瘡と基底板下部型線状IgA水疱性皮膚症の未知抗原の同定
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23791299
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
土坂 享成 久留米大学, 医学部, 研究員 (50599313)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 皮膚診断学 / 皮膚生化学 / 免疫沈降 |
Research Abstract |
自己免疫性水疱症は、皮膚抗原に対する自己抗体を示す疾患群である。これら自己抗体が反応する抗原は多彩であり、その検出が診断に重要なものとなっている。しかし、長年の研究にもかかわらず、未だに抗原が同定されていない疾患もある。本研究では、その内のIgAを自己抗体とするIEN型IgA天疱瘡と基底板下部型線状IgA水疱性皮膚症の抗原を同定することを目的とする。まず、IEN型IgA天疱瘡患者血清と、抗原産生を確認したKU-8細胞を用いて、IgAと高い親和性を有するアガロースビーズを用いた新しい免疫沈降法を開発することより目的抗原の分離を試みた。 当初、IgAと高い親和性を有するアガロースビーズとしてジャカリンを使用して免疫沈降を試みたが、患者血清に特異的なバンドを確認することが出来なかった。そこで、ペプチドMと呼ばれる新たなアガロースビーズで免疫沈降を試みることにした。このアガロースビーズは、ジャカリンと比較してIgAに対する特異性が高く、またジャカリンでは結合能が弱いIgA2に対する結合能が高い利点がある。ペプチドMを用いて、様々な条件(時間、塩濃度、pH、界面活性剤の変更等)で免疫沈降を行った結果、IEN型IgA天疱瘡患者血清において、特異的なバンドを複数認めた(約180 KDa、約130 KDa、約120 KDa 約85 KDa、約80 KDaの5つ) 。この内、約85 KDaと約80 KDa の蛋白のMS解析を行い、幾つかの候補蛋白を選定した。しかしながら、これらのリコンビナントタンパクを調製して蛍光抗体法等の確認実験を行った結果、この2つは抗原蛋白ではないことが判明した。現在、他に認められた特異的バンド(約180 KDa、約130 KDa、約120 KDaの3つ)のMS解析を行うためのサンプルを調整中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫沈降の様々な条件を検討して、幾つかの患者血清に特異的なバンドを検出することが出来た。検出できたバンドの内、2つについては抗原タンパクではないことが判明したが、残りの3つについて現在研究を進めている段階である。これまでのところ、昨年に提出した交付申請書のタイムテーブルにほぼ沿う形で進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、残りの特異的バンドのMS解析を行い、抗原候補タンパクを選定する。その候補タンパクの抗体を入手可能であれば、皮膚切片での組織免疫染色を行い、患者血清との組織免疫染色と比較検討を行う。この比較検討により、抗原タンパクとして可能性の高い物を選定し、そのタンパクのcDNAをKU-8細胞のtotal RNAよりクローニングし、 cDNA transfection法によりリコンビナント蛋白の作製を行う。得られたリコンビナント蛋白は、必要であれば精製を行い、免疫ブロット法や免疫沈降等の方法により、IEN型IgA天疱瘡の抗原であるかどうかを確認する。また、cDNA transfection法により得られた細胞を用いて、蛍光抗体法による確認も行う。また、基底板下部型線状IgA水疱性皮膚症の抗原の同定を進めていく。予定では、 IEN型IgA天疱瘡の抗原解析によって確立した免疫沈降法を応用することにしていたが、これまでに様々な細胞株を調べたが、この疾患の抗原を産生している細胞株を見つけることが出来なかった。真皮抽出液での免疫沈降も考えたが、真皮抽出液は強力な界面活性剤を使用することで作製することでしか得られないため、免疫沈降には不適である。また、サンプルとしての真皮にも限りがある。そのため、仮に免疫沈降を行うにしても、その条件検討を十分に行うことが出来ない。よって、基底板下部型線状IgA水疱性皮膚症の抗原解析は、別のアプローチで行うことを考えている。これまでに、真皮抽出液を用いて、多少方法を変更した免疫ブロットを行った結果、幾つかの患者血清において、特異的なバンドが認められたため、このバンドについて検討を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の遂行に必要な生化学/分子生物学関係の研究設備は久留米大学医学部皮膚科学教室及び久留米大学皮膚細胞生物学研究所に揃っているため、研究費の主要な用途は試薬類やプラスティック/ガラス製品等の消耗品となる予定である。他には、新たに抗原蛋白の同定を行う必要がある場合には、そのための質量分析の依頼料に使用することも考えられる。また、学会での研究成果の発表に必要な出張経費の他、次年度においては研究成果の論文投稿を予定しているため、そのための英文校閲費や印刷代等にも研究費を使用する予定である。
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