2011 Fiscal Year Research-status Report
皮膚上皮が適切な形態を持つようになる仕組み~Bnip3の解析を通じて
Project/Area Number |
23791304
|
Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation |
Principal Investigator |
森山 麻里子 (財)先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (40595295)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 角化細胞 / 紫外線照射 / 分化 / 細胞死 / 転写制御 |
Research Abstract |
ヒト初代角化細胞(HPEK)にアデノウイルスを用いてBnip3を強制発現させたところ、皮膚の分化マーカーの発現が上昇することを確認した。Bnip3がアポトーシスを誘発して皮膚分化を誘導しているのではないかと考え、全カスパーゼ阻害剤であるz-VAD-fmkを添加し、Bnip3の強制発現を行った。しかし、z-VAD-fmkの添加は、Bnip3による皮膚分化を抑制しなかった。このことより、Bnip3による皮膚分化誘導は、アポトーシスを介しているのではないと考えている。 また、今回我々は、HPEKにUV-Bを照射することで、Bnip3の発現が誘導されることを見出した。そこで、Bnip3を強制発現もしくはノックダウンしたHPEKにUV-Bを照射したところ、Bnip3を強制発現したHPEKでは細胞死が抑制され、逆にBnip3をノックダウンしたHPEKでは細胞死が促進されていることが確認された。面白い事に、これらの細胞を10日間ほど培養し続けたところ、Bnip3を強制発現した細胞は分化がすすみ、角質細胞様の細胞構造が形成された。しかし、Bnip3をノックダウンした細胞ではそのような細胞構造の形成は見られなかった。 また、Bnip3の発現を制御する転写因子を探索するために、in silicoでのBnip3プロモーター解析を行ったところ、Hes1の結合領域が何箇所かに存在することを見出した。そこで、HPEKにHes1を強制発現させ、ChIP解析を行ったところ、Hes1が直接Bnip3のプロモーターに結合することが確かめられた。また、Hes1を強制発現させることにより、Bnip3の発現が抑制されることも見出した。このことから、角化細胞中ではHes1は直接的にBnip3の発現を抑制していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、Bnip3がアポトーシスを誘導することによって分化を誘導する、という仮定は否定されてしまったものの、Bnip3が分化を促進する分子であることを、強制発現、ノックダウン、いずれの系でも確認することが出来た。また、新たな切り口として、UVBを照射した際のBnip3の働きについて研究が進んできており、Bnip3がUVB照射時において、細胞死を抑制しているということが判明したことのみならず、こちらにおいてもBnip3が分化を促進する分子であることを強く導く結果となっている。 また、Bnip3を強制発現もしくはノックダウンした細胞を使い、皮膚3次元構築を行うことにも成功した。目立った表現型は今は得られていないが、今後UVB照射の際、表現型が得られることが期待され、2次元と3次元での結果を対比し、より生理学的な意味を持たせられるものと考えている。 また、当初平成24年度に予定していたChIP解析であるが、Hes1に関しては既に解析も終わり、Hes1が直接的にBnip3のプロモーターに結合し、その発現を抑制していることを明らかとすることに成功している。 以上の結果より、当初の予定とは少し変化が生じているものの、軌道修正がうまく行われ、概ね順調に進展しているものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
Bnip3がどのようにして皮膚分化を促進しているのか、今後はアポトーシスではなく、オートファジーに注目して調べていく。そのために現在、オートファジーを可視化することの出来る、GFP-LC3安定発現HPEKを作製しているところである。今後はこの細胞にBnip3を発現させ、オートファジーが誘導されるのか調べていきたい。また、Bnip3を強制発現したHPEKに、3メチルアデニンなどのオートファジー阻害剤を加えることにより、Bnip3の分化誘導作用が抑制されるのかも調べていきたい。 また、UVBを照射されたとき、Bnip3によりどのように細胞死が抑制されるのか、そのメカニズムも調べていく。また、この細胞死がアポトーシスによるものなのか、ネクローシスによるものなのかを明らかにする。こちらもオートファジーとの関連性を軸にしていく。具体的には、Bnip3を強制発現した細胞にオートファジー阻害剤を添加することにより、UVB照射時の細胞死が増加するのか、またBnip3をノックダウンした細胞にオートファジー誘導因子を発現させることで、UVB照射時の細胞死が減少するのかなどを調べる。また、UVBを照射することによりBnip3の発現が上昇することを見出したが、このときDAPTなどでNotchシグナルを抑制し、Hes1の発現を抑えることで、よりBnip3の発現が上昇するのかなども併せて検討する。これらにより、Hes1とBnip3がどのように皮膚の分化を制御しているのか、またUVB照射によるダメージからどのように皮膚を保護しているのかが明らかになると考えられる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多くの研究費は、培養に必要なプラスチック製培養器具、ピペットなど、また高額なHPEK用維持培地などに充てられる。また、ChIP用、免疫染色用、FACS解析用の抗体をいくつか購入する予定である。さらに、アポトーシス解析用のキット(AnnexinVやTUNELなど)を購入予定である。
|