2011 Fiscal Year Research-status Report
うつ症状を呈する精神疾患の脳機能基盤と経時的変化についての縦断的研究
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23791309
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
滝沢 龍 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30420243)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 近赤外線スペクトロスコピー(NIRS) / 気分障害 / 統合失調症 / 精神疾患の生物学的指標(バイオマーカー) / 臨床応用 / うつ症状の鑑別診断補助 / 早期診断・早期治療 / 前頭葉 |
Research Abstract |
統合失調症圏(F2)と気分障害圏(F3)における近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)による前頭部信号パターンによる鑑別診断補助は、2009年4月から厚生労働省に先進医療として認められ、その実証が全国各地の指定機関において現在進められている。その一環として、臨床診断とNIRS信号パターンとの一致について再検証し、一致する患者群と一致しない患者群の要因や特徴を明らかにすること、さらに、これらの疾患群の縦断的NIRS波形の変化や臨床指標(症状・機能評価)との関連について検討を行った。統合失調症圏(F2)では、臨床病期の進行に伴い脳部位に応じた変化を認め、前頭葉背外側における減衰が低い発症年齢と関連することを明らかにした(Koike et al, 2011a, 2011b)。気分障害圏(F3)の先進医療開始後の横断的データでは、DSMに即した診断とNIRS信号パターンとの一致率は、全被験者では約5割(大うつ病性障害(MDD))と6割(双極性障害(BP))となり、先行研究(滝沢ら,2009)の約7-8割だった結果に比べて低下した。ただし、今回のデータで、うつ症状を呈しメランコリー型の気分障害患者に絞ると約7割(MDD:65.0%, BP:69.4%)の一致率となった。また、健常者の就学前からの発達過程に伴うNIRSデータの変化を明らかにした(Kawakubo et al, 2011)。気分障害群342名、統合失調症初発群23名、ARMS群37名 のうち、病初期の症例を中心に縦断計測を開始し、病初期のNIRSデータが数か月後の症状・機能の改善度と関連することが明らかとなってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
光トポグラフィー(NIRS)検査は東京大学医学部附属病院精神神経科に設置されており、研究だけでなく、先進医療として施行する体制も整えているため、今後も年間で200~250名程度のBaseline測定のリクルートが期待できる。2009年9月-2012年の現時点(3月現在)で気分障害群342名、統合失調症初発群23名、ARMS群37名の横断的Baseline計測サンプルを計測した。特に初発期もしくは病初期にある患者に対しては、3カ月毎の短期的な転帰について、フォローアップ計測で縦断的検討を行い、これらの1年~1.5年後までの転帰調査を気分障害11名、統合失調症初発群10名、ARMS群13名を測定した(2012年3月現在)。縦断的フォローアップ計測は計画通りだが、横断的フォローアップ計測は、計画以上に計測が行うことが出来た。さらには、英文や邦文雑誌への投稿も計画以上に早くアクセプトされた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの横断的検討だけはなく、今後の検討では、症状・機能の進行・回復過程とNIRSデータとの関連も、縦断的にフォローアップする過程で明らかにする。今後さらに症例数を増やし、診断や症状・機能の変化・予後予測の視点から臨床応用へ向けた検討を進める必要がある。気分障害圏においては、MDDとBPとの鑑別診断補助に一定の有用性があることが再現された。先行研究(滝沢ら, 2009)よりも一致率が下がった理由は、先進医療の開始によって、対象となった患者群の質の変化に伴う異種性の問題が一つ考えられる。MDDとのDSM診断を受けながら、NIRS信号としては一致しなかった群の臨床評価の特徴も今後検討していく予定である。縦断的な検討について、今後も学会発表を続け、英文雑誌や邦文雑誌に報告を続けていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後も縦断的な計測の継続のために、諸経費を要する。 前年度の計測の結果を解析し、学会や雑誌に発表していくために、学会参加費用や論文校閲費などを要する。
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Research Products
(38 results)