2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23791310
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒木 剛 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (00456120)
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Keywords | 統合失調症 / アットリスク精神状態 / 事象関連電位 / ミスマッチ陰性電位 |
Research Abstract |
本研究は統合失調症の発病前後における脳機能の変化を事象関連電位によって検証するものである。統合失調症前駆期をふくむアットリスク精神状態の被験者、初発統合失調症患者、健常被験者を対象に、統合失調症の脳病態を反映すると言われている事象関連電位のひとつであるミスマッチマッチ陰性電位を測定した。平成24年度末の時点で、アットリスク精神状態の被験者21名、初発統合失調症患者20名、健常被験者22名に対しての測定が修了している。主たる目的は、これらの3つの群を比較する横断的検討を行い、統合失調症における進行性脳病態を反映する生物学的指標を得ることである。 聴覚ミスマッチ課題に関しては、本研究では持続時間の逸脱によって得られる持続時間ミスマッチ陰性電位、周波数の逸脱によって得られる周波数ミスマッチ陰性電位の2種類のミスマッチ陰性電位を測定した。結果として、持続時間ミスマッチ陰性電位においては、アットリスク精神状態と健常被験者、初発統合失調症患者と健常被験者との間に有意な群間差がみられた。周波数ミスマッチ陰性電位においては、3群間で有意な群間差は得られなかった。これらより、持続時間ミスマッチ陰性電位の異常が、統合失調症発病前後の脳病態変化を反映している可能性が示唆される。さらにP3a成分についても検討を行ったところ、両課題において、初発統合失調症患者とアットリスク精神状態では、健常被験者よりも、有意に減衰が認められた。 これまで、精神疾患において診断や予後予測などに使用できる生物学的マーカーはほとんど認められておらず、実際の臨床に応用できる段階にまで至っていない。ミスマッチ陰性電位は臨床応用の可能性もみられており、今後のさらなる検証が必要となる。
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