2011 Fiscal Year Research-status Report
視床皮質神経回路の発達を制御する遺伝子の統合失調症関連解析および死後脳研究
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23791311
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
上里 彰仁 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 寄附講座教員 (90547449)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 統合失調症 / グルタミン酸 / 死後脳 / 関連解析 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
本研究は、統合失調症の発症や、グルタミン酸受容体遮断薬による統合失調症様症状の誘発が発達依存的である(神経発達の臨界期以後である)ことに着目して我々が同定した遺伝子について、遺伝子関連解析と遺伝子発現解析を行うことを目的としている。SNPsを用いた遺伝子関連解析:ラットの視床においてphencyclidine (PCP)投与により臨界期以降にのみ発現が誘導される遺伝子leiomodin2 (Lmod2)に注目し、統合失調症との関連を調べた。日本人の健常者160人と統合失調症患者160人の末梢血から得られたゲノムDNAを用いて、合計16か所のSNPsを利用してcase-control studyによる関連解析を行った。うち8か所のSNPsでは日本人では多型が存在しないか、minor allele頻度がごく低いことがわかった。残るいずれのSNPにおいても、疾患・対象群の間にgenotype, allele, haplotype頻度の優位な差は見られなかった。また、連鎖不平衡の解析により、今回解析したSNPは一つのhaplotype blockを形成していることがわかった。死後脳を用いた遺伝子発現解析:予備研究として、スタンレー脳バンクの前頭前皮質サンプルより得られた全RNAを用いて、グルタミン酸神経伝達に関わるいくつかの遺伝子について遺伝子発現解析を行った。解析にはquantitative RT-PCRを利用した。その結果、グルタミン酸受容体の足場タンパクに関わる遺伝子の発現が、統合失調症の特定の年齢層で低下していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SNPsを用いた遺伝子関連解析については320人の小サンプルについての結果が得られたが、より多くのサンプルでより多くのSNPsを用いた研究に移行する必要があり、現在準備中である。 死後脳を用いた遺伝子発現解析については、qRT-PCRを用いた予備研究により複数の遺伝子についての発現解析を行うことができたが、Lmod2の発現解析には着手していない。現在、in situ hybridizationのための死後脳を海外の他のブレインバンクにも依頼し、サンプル形態・数の具体的な調整を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
SNPsを用いた遺伝子関連解析は、より多くのサンプルでより多くのSNPsを用いて、引き続き同様の手法で研究を進める。死後脳を用いた遺伝子発現解析については、現在海外のブレインバンクに連絡をとっており、死後脳サンプルの形態・数の具体的な調整を行っている。まず少数の視床切片をとりよせ、in situ hybridizationによりLmod2の発現が視床の核に特異的に発現していることを確かめる。その上で新たに統合失調症・健常対象者の切片を用いて発現量の違いを解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、引き続きより多くのサンプルを用いて行うSNPsを用いた遺伝子関連解析に用いる。 また、死後脳を用いた遺伝子発現解析に関連し、ブレインバンクにおけるtissue processing feeや輸送費、in situ hybridizationに必要なプローブ作成や試薬に研究費を用いる。また、学会発表にかかる費用に用いる。
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