2012 Fiscal Year Research-status Report
視床皮質神経回路の発達を制御する遺伝子の統合失調症関連解析および死後脳研究
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23791311
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
上里 彰仁 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90547449)
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Keywords | 統合失調症 / グルタミン酸 / 死後脳 / 関連解析 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
SNPsを用いた遺伝子関連解析:Leiomodin2 (Lmod2)遺伝子に関し、統合失調症に加え気分障害について関連解析を行った。統合失調症に関して行った解析と同じ16個のSNPsについて、健常対照者160人と気分障害患者104人を比較したところ、疾患・対象群の間にgenotype, allele, haplotype頻度の優位な差は見られなかった。より多くのサンプルを用いた関連解析を行うため、合計数十例の健常対象者・統合失調症および気分障害患者より血液サンプル採取・DNA抽出を行い、サンプル蓄積を継続した。 死後脳を用いた遺伝子発現解析:本研究ではヒト死後脳組織を取り扱うが、新たな組織を海外の死後脳バンク(オーストラリアブレインバンク)から本学に取り寄せて適正な研究を行うため、本学の倫理審査委員会が時間をかけて厳正に審査を行った結果、承認された。Lmod2の発現解析をするための予備サンプルをオーストラリアブレインバンクより取り寄せ、in situ hybridizationのための実験環境を整えた。 その間、グルタミン酸神経伝達に関わる他の複数の遺伝子について、スタンレー脳バンクの前頭前皮質を用いて得られた遺伝子発現データの解析を行った。その結果、グルタミン酸受容体の足場タンパクに関わる遺伝子の発現が、統合失調症の特定の年齢層で低下していることがわかった。またNMDA型グルタミン酸受容体のコ・アゴニストであるD-セリンの細胞内輸送に関連する遺伝子の発現が双極性障害において低下し、リチウムによる治療歴と関連していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SNPsを用いた遺伝子関連解析ではLmod2について解析結果が得られた。また今後更に拡大したサンプルや疾患での解析を行う準備を進行することができた。 しかし死後脳を用いた遺伝子発現解析については、ヒト死後脳サンプルを海外から取り寄せ本学で取り扱うための倫理審査が慎重に行われたため、予定より時間がかかって承認された。現在はサンプルを取得し保存しており、in situ hybridizationの準備を整えた。補助事業期間延長の承認を得たため、本年度に実験を遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
SNPsを用いた遺伝子関連解析についてはサンプル数を増やして研究を行う。また気分障害などを含め対象疾患を広げる可能性がある。 死後脳を用いた遺伝子発現解析について、死後脳サンプルを取得し実験準備が整った。In situ hybridizationではアイソトープを使用するが、アイソトープは減衰するものであるため実験の直前に購入する必要がある。そのため次年度使用額として繰り越した研究費をその購入に充てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰り越した研究費をin situ hybridization のためのアイソトープ購入に使用する。H25年度以降に計画している研究は、本研究の延長・発展であり、統合失調症の病態に関連すると考えられるグルタミン酸神経伝達に関わる遺伝子についてのヒト死後脳研究を主題とする。本研究の繰り越しによって生じた実験環境・材料は次年度の研究に引き継ぐ。
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