2011 Fiscal Year Research-status Report
薬理ゲノム学的手法を用いたオランザピン誘発性糖代謝異常のメカニズム探索
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23791314
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
福井 直樹 新潟大学, 医歯学系, 助教 (90535163)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 精神医学 / 抗精神病薬 / 糖代謝異常 / 薬理遺伝学 |
Research Abstract |
新規抗精神病薬による代謝性副作用は、統合失調症患者における心血管疾患さらには死亡率の増加につながるとされ非常に大きな問題となっている。特に、オランザピンが糖代謝異常を引き起こすリスクが高いとされ、そのメカニズム解明は急務である。本研究では、内科領域における大規模genome-wide association study(GWAS)により同定されたエビデンスレベルが高い糖代謝異常の脆弱性遺伝子と、 オランザピン内服群におけるOGTT各パラメーターとの間で関連解析を行い、オランザピンが惹起する糖代謝異常と関連する遺伝子多型を同定する。さらに、同定された遺伝子の機能を検討する発展研究により、新規抗精神病薬がどのようなメカニズムで糖代謝異常を引き起こすのかという問題に迫る。本年度は、オランザピン内服群を対象にOGTTデータ、BMI、ウエスト径などの臨床データの収集および候補遺伝子解析を開始し、データベースの構築も開始した。オランザピン内服群と比較するため、他の新規抗精神病薬群や未服薬コントロール群のサンプリングも行っている。サンプリングやデータ解析は現在も進行中であるが、途中の結果の一部を示す。オランザピンを新たに開始した32名を対象として、開始から4週間のBMI変化量とglucose-dependent insulinotropic polypeptide receptor (GIPR)遺伝子との関連を解析した。その結果、GIPR遺伝子型(rs10423928 T/A)におけるAアリルを持つ群では、Aアリルを持たない群と比較し4週間後のBMI変化量(ΔBMI; 1.2±0.9 vs 0.5±0.6 kg/m2)が大きかった(p =0.016)。ベースラインのBMI、空腹時血糖値、空腹時インスリン値は2群間で差がなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、インクレチンの測定方法が変更となり、一時的にインクレチン測定が出来ない状態となったため、若干の研究計画の変更を余儀なくさらた。
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Strategy for Future Research Activity |
新潟大学医歯学総合病院精神科入院中で統合失調症と診断された症例の中で、本研究の内容を十分に説明され書面で同意の得られた症例のみを対象とする。(1)オランザピン内服群に対してOGTTを行う。OGTTは、オランザピンを同一用量で2週以上内服した時点で、12時間絶食後の早朝空腹時にOGTTを行う。同時に、インクレチン、一般生化学検査およびDNA抽出用の採血、身長・体重・ウエスト径計測なども行う。(2)文献検索により、GWASで同定された2型糖尿病や糖負荷後のインスリン分泌や血糖値と関連する遺伝子をピックアップする。(3)ピックアップされた遺伝子(GIPR、TCF7L2、HHEX、CDKN2B、CDKAL1、IGF2BP2、KCNQ1、GIPR、ADRA2A、ARL15、adiponectinなど)について、HapMap日本人データベースに基づきタグSNPを選択する。(4)ハイスループット・タイピング装置(ABI-7900HT)を用い遺伝子型判定を行う。(5)ゲノム情報と各OGTTパラメーター(fasting glucose, fasting insulin, HOMA-IR, AUC glucose, AUC insulin, insulinogenic indexなど)、インクレチン値、臨床情報(性別、年齢、BMI、ウエスト径、内服状況など)を対応させたデータベースを構築し網羅的解析を行う。また、オランザピン内服群と比較するため、他の新規抗精神病薬群や未服薬コントロール群のサンプリングも行う。昨年度は、インクレチンの測定方法が変更となり、一時的にインクレチン測定が出来ない状態となったため、研究費の未使用分が生じた。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
OGTTとインクレチン同時検査は1サンプル23,000円であるが、これは外注検査で行う。TaqMan® Genotyping Assaysの料金は1SNPあたり50,000円である。主にこの二つに研究費を使用する予定である。
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