2012 Fiscal Year Research-status Report
うつ病の神経可塑性障害仮説に基づく海馬歯状回の機能に関する脳画像研究
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23791317
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
藤井 猛 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命講師 (80570837)
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Keywords | 抑うつ気分 / 機能的MRI / 海馬 |
Research Abstract |
前年度に健常者を対象として行なった、類似度を変化させた視覚刺激のペアを用いた遅延見本合わせ課題の機能的MRI実験の結果をさらに解析し以下が明らかになった。すなわち海馬の歯状回とCA3が類似した感覚入力のパターン分離に重要で、類似度に応じて内側CA1に影響を与えることで効率的な記銘を可能にしている可能性が示唆された。さらに歯状回とCA3および外側CA1は健常者における閾値下の抑うつ気分と関連しており、その活動から抑うつ気分を予測可能である可能性が示唆された。以上について論文の原稿をまとめ、英文雑誌に投稿中である。 以上の知見がうつ病患者における抑うつ気分にも当てはまれば、うつ病患者においける抑うつ気分を客観的に評価するためのバイオマーカーとなる可能性がある。従ってうつ病患者を対象に、前年度と同じ課題の機能的MRI実験を行えるように、福井大学医学部付属病院の新しいMRI装置で機能的MRI実験を行えるようにセットアップした。また、疲れやすく長時間の機能的MRIの撮像が困難なうつ病患者にも参加してもらえるように、課題の時間を短縮する修正を行った。 さらに灌流MRI実験の準備として、海外で行われたFSL & FreeSurfer講習会へ参加して、灌流MRI実験の解析に関する知識を習得した。この講習会では機能的MRIのデータ取得および解析に関しても、今後適用可能な新たな手法を多く学ぶことができた。今後の研究に生かしてより良い結果を得たいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
機能的MRI実験には福井大学医学部付属病院のMRI装置を使用しているが、MRI装置の入れ替えに伴い、新しいMRI装置で新たに機能的MRI実験を行えるようにセットアップが必要になった。実験に利用するためにはMRI内部の被験者に視覚刺激を提示する装置の設置、視覚刺激装置とMRI装置の同期設定、MRI内部の被験者の反応を取得するためのボタンの設置などが必要だが、そのセットアップに多大な時間と労力がかかり、本年度に予定していたうつ病患者を対象とした機能的MRI実験は準備にとどまり、データ取得に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に研究代表者が所属研究機関を異動するため、新たに異動先機関で研究プロトコルの倫理審査を受け、新しい施設での実験準備を整える必要がある。その後速やかにうつ病患者を対象とした機能的MRI実験を行い結果をまとめたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
異動先機関へのワークステーションなどの機器の移送、および異動先機関での実験・研究環境を整えるために不足する物品の購入に使用する。 また、うつ病患者を対象とした機能的MRI実験の被験者および実験補助者への謝金の使用を予定している。 さらには現在投稿中の論文の受理に向けて、英文校正、投稿費、学会旅費などにかかる費用への使用を予定している。
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