2012 Fiscal Year Research-status Report
時計遺伝子を用いた、せん妄及び不眠症の病態発現における生物学的基盤の解明
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23791330
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
足立 浩祥 大阪大学, 保健センター, 准教授 (00303785)
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Keywords | 睡眠 / 不眠 / 睡眠覚醒リズム |
Research Abstract |
当該年度は、昨年度に引き続き、実臨床においてヒトの時計遺伝子発現量をどのように測定することが、将来的に臨床応用につながるのか、また、本研究の主なターゲットである時計遺伝子の測定を安定して行う手法について検討と実践を行った。時計遺伝子を抽出する生体試料としては、毛髪(毛母細胞)、血液、口腔粘膜が主に検討されたが、その確実性と実際上の侵襲性の問題から、血液中の単球からの抽出が最も現時点で妥当であろうと考えられた。実際の測定においては、NANO DROPにおける3検体の濃度測定結果はConcentrationおよび260/280でそれぞれ、24.1(2.23)、139.5(2.07)、35.3(2.05)との結果であり、260/280比はおおむね「2」前後が得られていた。また、バイオアナライザーを用いた5検体の電気泳動結果では、RIN値がそれぞれ9.30、7.20、9.40、8.60、9.00との結果であり、全検体いずれもRIN値が「7」以上の値が得られた。このように、健常成人の血液検体における測定において、安定した核酸の抽出を行うことができ、様々な睡眠覚醒リズムおよび不眠症状の重症度においてさらなる評価を行い、現在は観察および自覚的な訴えによる症状評価のみに頼っている臨床現場において、新しい診断方法や予防介入、治療評価への臨床応用に展開されるバイオロジカルマーカーを同定することが可能になるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初に予定していた、毛母細胞からの時計遺伝子抽出は、すでに方法としては発表がなされており(Akashi M, et al. Noninvasive method for assessing the human circadian clock using hair follicle cells. Proc Natl Acad Sci USA. 107:15643-8. 2010)、単回の測定には非侵襲的な方法であると考えられるが、種々の疾病に罹患している患者に対しては、心理的侵襲性や脱毛の懸念があり、測定対象とする試料を血液中の単球および口腔粘膜細胞として、ターゲットとなる時計遺伝子測定を行うこととし、血液試料を用いた測定系で安定した評価ができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
生体試料からの核酸の安定した抽出および測定が現在可能となっており、今後の本研究課題の推進方策として、同一被験者の複数回の測定により、時計遺伝子発現量がどのような幅で変動しうるのか。その再現性と変動性について詳細な検討を行う予定である。また、確実な生体内の体内リズムの変動を来す生理学的なモデルとして時差症候群が挙げられ、測定開始時を起点として、時差移動による体内リズムの変化が実際に時計遺伝子の発現量とどのように関連し、表現系としての時差症候群の症状に現れるのか、不眠症状のモデルとして検討を行い、時間生物学的な基盤の解明を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定に従い、次年度はさらに生体試料の測定頻度を増やしていく予定であり、Taqman プローブ法を用いてリアルタイムPCRにて定量、比較検討を行うため、このための測定キット、試薬などの購入を研究費の使用計画として主に予定している。
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