2011 Fiscal Year Research-status Report
自殺者死後脳におけるストレス蛋白質CRFと関連遺伝子の発現変化
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23791333
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
菱本 明豊 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50529526)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 死後脳研究 / ケース・コントロール研究 / プロスタノイド系神経伝達 / EP1遺伝子 / FKBP5 / CRF / UCN1 |
Research Abstract |
自殺者・健常対照群死後脳の腹外側前頭前野(DLPFC)領域から切り出した脳サンプルを用いて、現在同定されているCRFに関連する遺伝子群(CRF, CRHBP, CRHR1, CRHR2, UCN1(ウロコルチン), UCN2, UCN3, バゾプレッシンとその受容体、オキシトシンとその受容体)のmRNAをリアルタイムPCR法にて測定した。またウェスタンブロッティング法により各蛋白質発現量も測定し、二群間での差を測定した。さらにプロモーター領域の遺伝子変異をデータベースから網羅的に調べ、機能的一塩基多型(SNP)やタグSNPを選別、タイピングし、機能的ハプロタイプを同定して自殺者との関連解析を行った。現時点で各遺伝子において健常者と対照群において有意な差や相関を認めていない。さらに、我々は衝動性や攻撃性を制御する自殺行動に関わる候補遺伝子の一つとしてEP1遺伝子とFKBP5遺伝子に着目して自殺と健常者DNAを用いた関連解析を行った。EP1はプロスタグランジン(PG)E2の受容体である。PGE2-EP1受容体カスケードをはじめとするプロスタノイド系は免疫系のみならず神経系における役割が分かってきた。特にEP1欠損マウスでは心理ストレス下においてドパミン放出を介して衝動性亢進が見られ、我々の自殺との関連研究とも合わせて自殺行動の有望な候補遺伝子、神経パスウェイである可能性がある。今回我々はさらに自殺におけるプロスタノイド情報伝達系の役割を調べるために自殺者死後脳のEP1、PGE2、PG合成酵素であるCOX1,COX2の脳内発現を測定し、同時に遺伝学的関連解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに自殺者死後脳と健常対照群におけるストレス関連ホルモンCRFとそれに関連する遺伝子の免疫蛋白定量を行っている。ケース・コントロール比較で現時点では有意差を得ていないので、蛋白発現実験からのアプローチと同時に遺伝子関連解析から得られた自殺関連の候補遺伝子の蛋白発現解析をすでに始めている所である。自殺の関連解析結果(EP1とFKBP5遺伝子)はすでに国際誌上にて発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレス応答や気分・抑うつ気分に関わる因子であるEP1遺伝子が自殺既遂者と関連していることが明らかになったことを踏まえ、自殺者死後脳におけるEP1蛋白質発現の変化を同定していく予定である。さらにEP1遺伝子を含むプロスタノイドシグナル系と自殺との関わりを遺伝子関連研究と死後脳研究によって明らかにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、人サンプル(死後脳・抹消血液中DNA、mRNA)、遺伝子工学的手技により研究の推進方策に示した実験を遂行する。また、研究最終年であるため、国際学会等に研究成果を発信する予定である。
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