2012 Fiscal Year Annual Research Report
自殺者死後脳におけるストレス蛋白質CRFと関連遺伝子の発現変化
Project/Area Number |
23791333
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
菱本 明豊 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50529526)
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Keywords | 自殺 / 死後脳 / CRF / FKBP5 / EP1 / 神経栄養因子 / BDNF / 関連解析 |
Research Abstract |
自殺行動における生物学的基盤を明らかにするため、ストレス応答関連タンパク質、特にCRFとその関連タンパクに着目し自殺者死後脳と健常対照群の蛋白質、mRNAの発現解析を行ってきた。結果、自殺者/健常対照群死後脳の腹外側前頭前野(DLPFC)領域におけるCRF関連遺伝子群(CRF, CRHBP, CRHR1, CRHR2, UCN1(ウロコルチン), UCN2, UCN3, バゾプレッシンとその受容体、オキシトシンとその受容体)のmRNA、蛋白質レベルの発現変化を見出せなかった。問題点として自殺者死後脳サンプルの死後時間やpH変化が遺伝子mRNA、蛋白質発現量に大きな影響を及ぼしていることが分かった。加えてサンプル数の少なさも問題点として挙げられた。さらに我々は当該遺伝子上の一塩基多型(SNP)を用いた自殺の関連解析を行ったがいずれも有意な関連を見出すことはなかった。 そのためCRF関連遺伝子に加えHPA系を制御するその他の遺伝子群、プロスタノイド情報伝達系(PGE2-EP1受容体カスケード)関連遺伝子、炎症性サイトカイン、神経保護栄養因子に着目し、蛋白発現解析と遺伝子関連解析を網羅的に行った。結果、FKBP5遺伝子の特定ハプロタイプと自殺群、EP1遺伝子の特定ハプロタイプと女性自殺群に有意な関連を認めた。このことは自殺行動の脆弱性にHPA系を制御するFKBP5やプロスタノイド伝達系のEP1が遺伝的に関与していることを示している。 さらに我々は自殺者死後脳DLPFCにおいて神経栄養因子のBDNFの蛋白発現レベルが対照群と比べて有意に低下していることを見出した。これはこれまでの報告とも合致し、遺伝的関連研究では相関を認めなかったことから状況依存的な発現量の変化と考えられた。今後はBDNFが自殺行動の予測因子、バイオマーカーになりうるかをヒトサンプルを用いて進めていく。
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