2011 Fiscal Year Research-status Report
ヘルペスウイルスを利用した新規双極性障害動物モデルによる,気分障害発症機序の研究
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23791355
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
小林 伸行 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20385321)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | SITH-1 / 気分障害 / 動物モデル / ヒトヘルペスウイルス6 / 双極性障害 |
Research Abstract |
(i)ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)潜伏感染遺伝子SITH-1発現マウスを利用した遺伝子発現解析 SITH-1を発現するアデノウイルスベクターをマウスの脳内へ投与した結果、躁様行動とうつ様行動を示した。その違いを検討するために、各病相からRNAを精製した。これらを用いて、DNAマイクロアレイ解析を行った結果、多数の遺伝子発現が変化していた。このことはSITH-1の影響が多岐にわたることを示唆した。(ii)SITH-1発現トランスジェニックマウスの作製 従来のアデノウイルスベクターを利用したSITH-1発現マウスでは、投与後徐々にSITH-1発現が減弱することが知られていた。そのため、恒常的にSITH-1を発現するトランスジェニックマウス作製を試みた。SITH-1が胎生期に毒性を発揮することが疑われたため、Cre/loxP発現制御システムを利用したSITH-1発現プラスミドの構築を行った。サイトメガロウイルス由来のプロモーター(CMV IE プロモーター)制御で発現するSITH-1遺伝子の上流へ、両端にloxP配列を挿入したEGFP遺伝子を組み込んだ。トランスジェニックマウス作製のため、このコンストラクトをマウス受精卵にマイクロインジェクション法にて注入した。しかし、SITH-1遺伝子陽性のトランスジェニックマウスは得られなかった。これはCre/loxP発現制御システムであっても、SITH-1発現のリークがあり、毒性を発揮したためと考えられた。このことはSITH-1が細胞毒性を持つことが示唆された。 そのため、CMV IE プロモーターよりも活性が弱い単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーター(TK プロモーター)に改変したコンストラクトを用いて、マイクロインジェクションを行った。その結果、SITH-1遺伝子陽性のトランスジェニックマウスを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、気分障害様の行動異常を示した、SITH-1を発現する動物モデルを解析することで、双極性障害の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。 3年間の研究期間の初年度である平成23年度は、主に動物モデルを用いた研究が主である。SITH-1発現動物モデルを利用したDNAマイクロアレイの解析結果では、SITH-1 により当初の予想より多くの遺伝子の発現が変化していた。このことから、SITH-1の影響は多岐にわたることが示唆された。一方、その中から、気分障害に関連する候補遺伝子を選択するのは困難となることが考えられた。 そこで、より詳細な解析が可能となるトランスジェニックマウスの重要性が増すと考えられた。トランスジェニックマウス作製に当たり、SITH-1の毒性による影響に苦慮したが、現在までにSITH-1遺伝子陽性のトランスジェニックマウスが得られている。これらのことから、現在までの達成度は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、気分障害に関連する候補遺伝子を選択し、これを実際に双極性障害患者で検証することが重要である。臨床検体を目標症例数採取するには時間を要することが考えられるため、平成24年度から2年間かけて行う。 また、本研究で用いるトランスジェニックマウスはCre/loxP発現制御システムを利用しているため、SITH-1を発現させるためにはCre リコンビナーゼが必要である。平成24年度ではグリア特異的に発現するCre リコンビナーゼ発現アデノウイルスベクターを作製する。このアデノウイルスベクターを、作製したトランスジェニックマウスへ脳内投与し、SITH-1を恒常的に発現するマウスの行動を解析する予定である。このことから、SITH-1と躁うつ症状との関連を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヒトを対象とした研究としては、血液からRNA、DNAを精製するための試薬(PAXgene Blood RNA System、PAXgene Blood DNA System)を購入する予定である。 動物実験のための研究費としては、マウス購入費やその飼育費以外にも、アデノウイルスベクター作製試薬費用、アデノウイルスベクター作製に伴う細胞培養用試薬費用、さらに、マウスの遺伝子発現を調べるため、臓器からRNAを精製するための試薬費用(EZ1 RNA Universal Tissue Kit)に利用する予定である。 また、各血液や臓器より精製したRNAからcDNAを合成するために使用する逆転写試薬ならびに遺伝子発現定量に利用するreal-time PCR用試薬を購入する予定である。 平成23年度未使用額が4,104円生じているが、これは試薬購入により生じる端数である。平成24年度の研究費と合わせて使用するに当たり、大きな計画の変更は生じない。
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Research Products
(3 results)