2012 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症発症予防に関わる母乳由来母子間伝達物質の同定
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23791363
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
前川 素子 独立行政法人理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, 研究員 (50435731)
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Keywords | 母乳 / 統合失調症 / C57BL/6Nマウス / C3H/HeNマウス / PPI / 脂肪酸 / ビタミン / アミノ酸 |
Research Abstract |
精神疾患発症メカニズムについては、脳の発達期におけるさまざまな侵襲が発症脆弱性形成の基盤になる可能性が考えられてきた(“神経発達障害仮説”)。環境要因として栄養の関連が示唆される事象としては、近年の大規模な疫学調査で判明したオランダと中国における2つの大飢饉の事例が有名で、妊娠中の母親が一時的に飢饉にさらされると子供の将来の統合失調症発症率が2倍に高まる(Susser et al., Arch Gen Psychiat, 1992; St Clair et al., JAMA, 2005)という大規模疫学データが報告されている。 統合失調症をはじめとしたいくつかの精神疾患では、プレパルス抑制(prepulse inhibition: PPI)の減弱が認められる。我々はこれまでに、PPIが高いC57BL/6Nマウス(B6)とPPIが低い C3H/HeNマウス(C3)の2系統を同定したが、前者を健常者モデル、後者を精神疾患モデルとして実験に用いた。我々はPPIの高いB6マウスの母乳にはPPIを高める栄養物質が含まれる(またはC3マウスの母乳にはPPIを低める栄養物質が含まれる)可能性を想定して、1) B6母獣 x B6仔、2) C3母獣x C3仔、3) C3母獣 x B6仔、4) B6母獣 x C3仔、以上の組み合わせで出生後2日目から離乳まで母仔交換実験を行った。仔マウスが生後6週齢に成長した時点でPPI試験を行ったところ、B6母獣に育てられたC3仔マウスは、C3母獣に育てられたC3仔マウスに比べて、PPIの値が有意に上昇した。この結果から、B6母獣の母乳にはPPIを高める栄養物質が含まれることが示唆された。そこで、B6母獣とC3母獣から生後7、15、21日目の3点で母乳を採取し、文献等で精神疾患との関連が示唆される脂肪酸、ビタミン類、アミノ酸、などの含量の比較を行った。
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