2011 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症におけるミトコンドリア機能異常ならびに病態関連遺伝子の探索
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23791367
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
市川 智恵 (財)東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 流動研究員 (60383288)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 統合失調症 / ミトコンドリアDNA / 遺伝子多型・変異 |
Research Abstract |
統合失調症の発症要因として遺伝要因が強く関連することが知られており、その一つとしてミトコンドリアの関与が示唆されているが、いまだ不明な点が多い。そこで、統合失調症患者のミトコンドリアDNA (mtDNA)の多型・変異の探索を行った。患者検体からmtDNAを抽出し、mtDNA上の遺伝子・tRNA・promoter領域について多型・変異を同定した。アミノ酸置換を伴うvariantのうち、統合失調症患者でのみ検出され、mtSNP データベースに登録されている精神疾患以外の日本人では報告されていないvariantを選択し、これらを統合失調症に関与する可能性のあるvariantとしてリストアップした。本年度の解析では患者84例の末梢血mtDNAから、7遺伝子に8ヶ所のvariantを同定した。PlyPhenツールにより、タンパク質におけるアミノ酸置換のダメージを予測した結果、4ヶ所にダメージが予測された。この中には開始メチオニンが置換するvariantや、ミトコンドリア病の原因として報告されているvariantが含まれていたことから、これらアミノ酸置換がタンパク質や複合体の機能低下を招いていた可能性が示された。 また、家系の異なる複数の症例から検出されたvariantは認められないことから、多様なvariantによってミトコンドリア呼吸鎖複合体の機能低下が生じていた可能性を示唆する結果であった。 統合失調症におけるmtDNAのvariantの機能についてはほとんど解析されていない。ミトコンドリアの機能異常が本症の病態に関与することが明らかとなれば、従来と全く異なった治療薬の開発に道を開く可能性があることから、今回同定したvariantの解析は本症の原因解明ならびに治療薬開発へ発展できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者末梢血から統合失調症のみに見出されるvariantを複数同定し、多様なvariantが本症に関与する可能性を示した。機能低下が推測されるvariantについて、該当患者末梢血からリンパ芽球様細胞株を作製できた。健常者の株化細胞も作製しており、遺伝子発現の比較、複合体活性測定の準備が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果で得られた統合失調症関連variantには、ミトコンドリア病の原因となるvariant、あるいは関連すると報告されているvariantがいくつか同定された。これはミトコンドリアの機能異常が統合失調症の病態に関与することを強く示唆する結果である。新規に見出されたvariantも含まれており、これらvariantの機能解析が特に重要であると考えられる。来年度は、mtDNA の統合失調症関連variantについて、株化リンパ球を用いた遺伝子およびタンパク質発現量の解析、ならびに複合体などの活性と機能解析を重点的に試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
mtDNAの多型・変異の探索に必要な試薬のほか、遺伝子ならびにタンパク質の発現量を解析するための試薬を購入する。また、mtDNAのvariant機能を解析するためのプラスミド作製、安定発現細胞株の作製、ならびにミトコンドリア・呼吸鎖複合体活性測定のための活性酸素やATP産生測定の試薬を購入する。また成果報告のための学会参加費用として使用する。
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Research Products
(4 results)