2012 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症におけるミトコンドリア機能異常ならびに病態関連遺伝子の探索
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23791367
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
市川 智恵 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (60383288)
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Keywords | 統合失調症 / ミトコンドリアDNA / 遺伝子多型・変異 |
Research Abstract |
統合失調症の発症要因として遺伝要因が強く関連することが知られており、その一つとしてミトコンドリアDNA(mtDNA)の変異や多型(variant)の関与が示唆されている。本年度は、昨年度に引き続き、患者末梢血からmtDNA の変異・多型の探索を行い、統合失調症に特徴的なミトコンドリアDNAのvariantの探索を行うとともに、新たに解析規模を拡大し、検出されたvariantについて異なる母集団を用いた再現性の検討を行った。 患者特異的に同定されたvariantの中から、11 ヶ所のvariantに着目し、患者314名、対照76名について再現性を解析した。その結果、4ヶ所のvariantが再現性良く患者群から同定され、より統合失調症の病態に関与したと考えられるvariantを抽出することができた。 またmtDNAのハプログループは地域によって統合失調症に関与する可能性が示唆されていることから、今回解析を行った日本人の統合失調症患者のmtDNAのハプログループを解析しているが、対照群と比較した結果、これまでに本症のリスクとなり得るハプログループは見出されておらず、ハプログループとしての関与に比べ、個人もしくは母系遺伝のmtDNAのvariantが病態に強く関与する可能性が示唆された。 これまで統合失調症におけるmtDNAのvariantの再現性はほとんど検討されていなかったが、本研究の結果、いくつかのvariantは患者に集積している可能性が示唆された。患者から同定されたvariantには、呼吸鎖複合体機能にダメージを与え得るvaritantが含まれていたことから、一部の統合失調症ではミトコンドリア機能低下が生じているという仮説を支持する結果であり、本症の原因解明へ発展できる結果と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
mtDNAのvariantの探索・同定と再現性、ならびにハプログループを解析することで、ミトコンドリア機能低下を生じ得るvariantを同定できた。また、本年度で、患者および対照群の末梢血からmRNAの抽出が行えたことから、遺伝子発現を解析する準備が整った。ミトコンドリア機能を解析・推測するためのアッセイ系の準備も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果で得られた統合失調症関連variantには、新規に見出されたvariantや、ミトコンドリア病に関連すると報告されているvariantがいくつか同定された。来年度は、これらvariantがミトコンドリアの機能に与える影響を調べる。患者および対照群のmtDNAコピー数の測定を進め、mtDNAのvariantとの関連を調べる。また、ミトコンドリア機能に関連した遺伝子発現をRT-PCRにより解析し、患者に特有の遺伝子発現変化を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
mtDNAの多型・変異の探索に必要なシーケンスに用いる試薬のほか、mtDNAのコピー数の解析、遺伝子の発現量ならびにタンパク質の発現量を解析するための試薬・primer・抗体・器具などを購入する。また、ミトコンドリア・呼吸鎖複合体活性測定のための活性酸素や酸化ストレス測定の試薬を購入する。また成果報告のための学会参加費用として使用する。
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Research Products
(2 results)