2013 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症スペクトラム児をもつ母親の養育行動を支える神経基盤に関する研究
Project/Area Number |
23791370
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
則内 まどか 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 主任研究員 (20571897)
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Keywords | fMRI / 養育行動 / 脳機能 / 母子 / 育児 / 乳幼児 |
Research Abstract |
1.目的:感受性の高い養育行動は、子どもの社会的発達の観点からその重要性は高い。親の対人認知や情動制御の問題あるいは育児ストレスは、適切な養育行動を妨げる要因となりうる。要支援の親に対する科学的な理解に基づいた育児支援は重要であるが、親個々人の特性と養育行動に関する脳機能の関係性は、ほとんど解明されていない。本研究では、24年度より加えた推進方策に従い特に親の個人特性に着目し、親の養育行動に関する脳機能との関連性を検討することを目的とした。 2.方法: 2-3歳の定型発達児を持つ健常な母親(35.14 ± 4.86歳)28名を対象とし、母親の脳活動を機能的磁気共鳴画像法(以下fMRI)で計測した。fMRI実験ではわが子と見知らぬ子の動画をランダムに提示し、それぞれに伴う脳活動を比較することで、わが子に対する母親の脳活動を解析した。さらに母親自身の自閉症的行動特徴、育児ストレス、子どもへの愛着の程度を評価し、脳活動との関係性を検討した。 3.成果:わが子に対して有意に活動した脳領域は、先行研究で示された「養育行動の動機付け」に関する右前頭眼窩皮質、右島皮質、中脳水道周囲灰白質、基底核に加え、「適切な養育行動」に重要な右後部上側頭溝、紡錘状回、下前頭回などであった(p<0.05, FWE)。さらに脳活動と個人特性について相関解析を行った結果、育児ストレスが強いほど、右前頭眼窩皮質、小脳半球、小脳虫部の活動が低いことが示された(p<0.05)。特に右前頭眼窩皮質は母親の愛情や養育行動の動機付けと関係しており、この活動低下は育児ストレスを強めることが推察される。自閉症的行動特徴および子どもへの愛着の程度と脳活動には有意な相関が示されなかった。以上より、本研究では母親の育児ストレスが養育行動に関する脳機能に影響を及ぼすことが示され、実質的な育児支援のエビデンスとして有益な知見が得られた。
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Research Products
(7 results)