2011 Fiscal Year Research-status Report
スポット陽子線照射における体内金属マーカー存在下の照射精度向上に関する研究
Project/Area Number |
23791379
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松浦 妙子 北海道大学, 医学研究科, 特任助教 (90590266)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 陽子線治療 / 動体追跡 |
Research Abstract |
平成23年度は本研究課題遂行にあたり、最も基礎的課題である金マーカーサイズ・形状の最適化、CT金属アーチファクト起因の飛程誤差の検討を、透視実験とモンテカルロ計算を用いて行った。動体追跡スポット陽子線照射を用いた呼吸性移動腫瘍の治療において、体内マーカーの使用は必須である。肺や肝臓のみならず、前立腺などの腫瘍に於いても治療中の標的移動が起こり得るとの報告がされているため[1]、これらの全ての臓器で治療中に透視でマーカー位置を認識することが必要になる。本年度は、人体ファントムと様々な形状やサイズのマーカーを用いた透視実験を行い、1.5 mm, 2 mmの球体のマーカー、1.5 mmφのコイル状のマーカーが上記の臓器内部、或いは臓器近傍において視認できることを確かめた。また、これらのマーカーが刺入された時の陽子線線量分布と腫瘍制御確率TCPへの影響評価を行った。その結果、1.5 mmマーカーを用いれば、2門以上の門数でマーカー起因のTCP低下は無視できるが、2 mmマーカーを用いた場合は、3門以上の門数が必要であることが分かった。これらのマーカーが作る線量遮蔽領域は非常に細い糸状の領域であり、治療計画機に搭載されているような解析的な線量計算アルゴリズムで再現出来ないと考えられるため、実臨床における治療手順に於いては、治療計画時にマーカーを周辺臓器と同じCT値で塗りつぶす方法が現実的との考察を行った。現在これらの結果を論文にまとめ、投稿中である。また、結果の一部を6-th JKMP 11-th AOCMP (Fukuoka, 2011.9)及び第2回分子追跡放射線治療国際会議(京都, 2012.2)において発表した。[1] D. Litzenberg et al. Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 65, 548-553 (2006).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属マーカーのサイズや配置の腫瘍内における最適化に関して、本年度の研究において明らかにすることができた。また、スポット陽子線治療時の、標準的な必要門数も決まった。金マーカーを用いることで、動かない臓器に対しては、小さなマージンを用いても位置精度の高い照射を行うことができる。しかし治療中、また治療期間中に患者の臓器移動が起こると、陽子線飛程の伸縮やスポット照射位置の位置ずれが起こり、計画の線量分布を達成できない可能性があるため、平成24年度においてこの問題の解決を目標としたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度の成果を広く発表していくとともに、動体追跡スポット陽子線照射法で治療を行う際の最適治療計画パラメターや動体追跡に特化したマージンとは何かを明らかにしていきたい。このため、北海道大学の所有する実患者の呼吸パタンと、陽子線加速器の運転パタンを同期させて線量分布を作成する数値シミュレーションを行い、治療計画におけるマージン・スポット間隔・リペイント数・スキャン経路等を変えた際の線量誤差の傾向や絶対値を解析する。これには、平成23年度本研究費で購入したワークステーションを用いる。また、治療期間中に患者の臓器移動に対しては、コーンビームCTを用いて日々の陽子線飛程や照射体積の変化を即座に算出するシステムを構築する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に予定していたファントム製作費に関しては、これまでの透視実験に関しては研究者の所属施設が所有する資材を用いることができたため、平成24年度に繰り越し、シミュレーションとの比較に適したファントム製作費に充てる。さらに、平成23年度の成果発表のための旅費(アメリカにおける医学物理学会を予定)と、平成24年度の研究のための資料収集のための旅費、論文校正費、計算環境を更に向上させるためのコンピューター部品・ソフトウェアの購入にも使用する。
|
Research Products
(5 results)