2012 Fiscal Year Annual Research Report
樹状細胞のパターン認識受容体に及ぼす放射線の影響と機構解明
Project/Area Number |
23791383
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
吉野 浩教 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (10583734)
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Keywords | 放射線 / 自然免疫 / 樹状細胞 / パターン認識受容体 / レドックス制御 |
Research Abstract |
樹状細胞は免疫応答において重要な細胞で、がん治療後の良好な予後のための免疫力強化という点でも重要な役割を担っている。しかしながら、樹状細胞およびその前駆細胞に対する放射線の影響についての詳細は不明である。さらに、病原体に普遍的に存在する分子パターンを認識するパターン認識受容体に及ぼす放射線の影響評価はほとんどなされていない。そこで本研究では、まず2011年度に樹状細胞の前駆細胞であるヒト単球から樹状細胞への分化誘導における放射線の影響を検討した。ヒト単球にX線を照射し、照射約1日後に既報のサイトカインの組み合わせにより樹状細胞へ分化誘導を行った後、細菌細胞壁構成成分であるリポ多糖および炎症性サイトカインで刺激し、細胞表面発現抗原解析や各種機能解析を行った。その結果、X線照射単球由来樹状細胞は非照射対照群と比べて、リポ多糖刺激後におけるT細胞を刺激する分子の発現やサイトカイン産生などが著しく低下した。一方で、炎症性サイトカイン刺激後ではこれら低下は観察されなかったことから、放射線に曝露された前駆細胞由来樹状細胞は炎症性サイトカインに対する応答性は比較的維持しているものの、病原菌に対する応答性が著しく低下することが示された。また、その原因として細胞内のレドックス制御の応答性変化の可能性を示唆した。2012年度は放射線曝露後のリポ多糖に対する応答性低下を詳細に検討するため、リポ多糖の受容体で代表的なパターン認識受容体であるToll様受容体に及ぼす放射線の影響を評価した。その結果、ヒト単球のToll様受容体発現は放射線照射によって顕著に減少した一方で、同一単球から誘導した樹状細胞では放射線による発現影響は認められなかった。以上のことから、放射線がToll様受容体に及ぼす影響は、単球の分化段階により異なり、未分化細胞においてその影響が強いことが明らかとなった。
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