2012 Fiscal Year Annual Research Report
放射線治療による腫瘍特異的免疫の活性化に関する研究
Project/Area Number |
23791393
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
吉本 由哉 群馬大学, 医学部, 助教 (80594390)
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Keywords | 抗腫瘍免疫 / 放射線治療 |
Research Abstract |
最近の研究より、放射線や抗がん剤が、直接的殺細胞効果のみならず、宿主の免疫活性化を介して抗腫瘍効果を発揮する可能性が指摘されている。しかし、ヒト臨床の放射線治療で実際に抗腫瘍免疫が誘導されるかは不明である。本研究はがん患者で実際に放射線治療により抗腫瘍免疫が誘導されることの立証を目的とした。対象は本研究施設で多数の治療症例がある食道がんとした。 食道がん特異的なHLA拘束性抗原が複数知られており、そのような抗原に特異的なCTLについて検討した。まず患者の頬粘膜を少量採取し、HLAを決定した。放射線治療中の患者より、治療開始前、治療中、治療後、と数回に分けてンパ球の採取を行い、既知のHLA拘束性抗原に反応するCTLを検出するためにIFNγ、IL-2産生を指標としたELIspot assayを行った。複数の患者において、放射線治療により抗原特異的なCTLが誘導されることを見出した。 放射線治療により誘導されるCTLが、治療効果に影響しているかについて、動物モデルを用いて検討した。C57BL/6マウスを用い、同マウス由来扁平上皮がんLewis lung carcinoma(LL/C)を移植し、腫瘤形成が認められた後、高線量率X線照射装置を用いて実験的放射線治療を行った。X線照射により腫瘍の増殖遅延、生存期間の延長が認められた。CTLの関与を証明するために、抗CD8抗体を投与してCTLを除去したところ、X線照射による治療効果は著しく減弱した。 まとめると、ヒトがんの放射線治療において抗腫瘍免疫が活性化することを世界に先駆けて見出した。さらに、誘導された抗腫瘍免疫は放射線治療の効果に重要な役割を果たしていると考えられた。
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