2012 Fiscal Year Research-status Report
脳内σ―1受容体イメージングによる老化及びストレス性疾患の客観的評価に関する研究
Project/Area Number |
23791400
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小阪 孝史 金沢大学, 学際科学実験センター, 助教 (50579836)
|
Keywords | 選択的σ-2受容体リガンド / イメージング |
Research Abstract |
2年目となる本年度(平成24年度)も引き続き、老化やストレス性疾患の客観的な評価法の開発を目的として、脳内のσ-1受容体のイメージング研究に取り組んだ。本研究の過程において、非常に興味深い結果が得られたことを以下に報告する。 ベサミコールは、生体内で小胞アセチルコリントランスポーター(VAChT)とσ受容体(σ-1, σ-2)に親和性を示す。そこで、合成した新規ベサミコール類縁体群について、in vitro薬物阻害実験によりスクリーニングを行った。実験には、組織にラット脳もしくは肝ホモジネートを、ラジオリガンドに[3H](-)-ベサミコール、[3H](+)-ペンタゾシン、もしくは[3H]1,3-ジ-o-トリルグアニジン(DTG)を用いた。またVAChT系ではσ受容体のマスキングにDTGを、またσ-2系ではσ-1のマスキングに(+)-ペンタゾシンを用いた。その結果、trans-デカリン骨格と4-フェニルピペリジン骨格のパラ位にヨードを有するp-ヨード-trans-デカリンベサミコール(PIDV)は、σ-2受容体に対して高い親和性と選択性を示すことが明らかになった。σ-2受容体は細胞分化が活発な腫瘍に多く発現すると報告されているが、臨床応用可能なσ-2受容体選択的リガンドは未だ開発されていない。そこで、高い親和性と選択性を有するσ-2受容体イメージング剤を開発することが出来れば、増殖能の大きい腫瘍細胞の画像診断が可能となり、核医学の分野で社会に大きな貢献できると考え、PIDVの更なる評価を行うことにした。 次に、対応するトリメチルスズ体を前駆体とし、[125I]PIDV標識合成実験を行った。その結果、一般的なスズ-放射性ヨード交換反応による125Iの導入とHPLCでの精製に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高選択的σ-2受容体リガンドとなりうる新規放射性化合物の開発に成功し、増殖能の大きい腫瘍細胞のイメージングという新たな研究への可能性を発見した。厚生労働省が発表した平成23年の日本人の死因に関する調査結果では、悪性新生物(ガン)は1位であり、しかも調査開始時点から平成23年時点に至るまで一貫して増加傾向にある。ガン治療には、腫瘍細胞の早期発見は最重要項目である。従って、本研究の目的は、当初の「σ-1受容体イメージング」から「σ-2受容体イメージング」へと変わることにはなるが、本研究の社会的貢献は非常に高いと予想されるので、研究成果は順調に得られていると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
新たに発見したσ-2受容体イメージングの可能性について、その生体内での機能などを調べ、より深く検討していく。σ-2受容体は細胞分化が活発な腫瘍に多く発現するので、担癌マウスを用いた[125I]PIDVのin vivo評価を行う実験を計画している。また、PIDVをリード化合物に設定し、σ-2受容体に対する親和性・選択性の更なる向上を目的として、新規PIDV類縁化合物群の合成も計画している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述の推進方策に従い、担癌マウスの準備などin vivo評価に必要な動物や腫瘍細胞、器具、消耗品などの購入や、有機合成に要する試薬の購入を計画している。また、実験成果の発表や情報収集を目的とした積極的な学会出席による旅費の支出も予定している。
|