2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23791404
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
本杉 宇太郎 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (50377579)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 磁気共鳴画像 |
Research Abstract |
磁気共鳴画像装置(MRI)を用いた拡散強調像を用いると見かけの拡散係数(ADC値)という定量値を得ることができる.ADC値は大きく分けて毛細血管内の潅流と水分子のブラウン運動の2つの影響を総合して評価している.通常は組織内の水分子拡散をターゲットに行うため潅流の影響がなるべく少なくなるようにパラメータを設定する.しかし,組織潅流はそれ自体が有用な情報であり,無視してしまうのはもったいない.そこで,血管内組織潅流による影響と血管外の真の分子拡散による影響とに分離して計測するIntravoxel Incoherent Motion (IVIM)イメージングが提唱されており,今回我々はIVIMイメージングの初期検討を行った.腎疾患患者を対象とした検討では,患者群を正常腎機能群,軽度腎機能低下群,高度腎機能低下群に分けて比較すると,腎機能低下に従ってIVIMイメージングで測定されたD値,D*値ともに低下する現象が確認された.これは腎機能低下症例では腎実質の線維化などの影響による水分子拡散の低下と,腎への総血流量の低下による潅流量低下をそれぞれ表しているものと思われる.また肝疾患患者を対象に,肝腫瘤の鑑別診断への応用も試みた.良性腫瘍と悪性腫瘍を比較した場合,潅流による影響(D*値)よりも真の分子拡散(D値)がより良悪性の鑑別に有用である可能性が示された.また従来報告されていた良悪性腫瘍における見かけの拡散係数(ADC値)の違いは,主に分子拡散の差をみていたことが確認された.これらの結果はMRI関連の欧文誌に投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常ボランティアを用いた初期のパラメータ設定,吟味の段階は終了し臨床応用へ入ることができた.倫理委員会承認のもと,すでに多数例に当該検査を施行し目的に沿ったデータ収集を行うことができている.これらの結果は日本磁気共鳴医学会,北米放射線学会等で発表済で,MRI関連の主要欧文誌へ投稿中である.以上より,当初の計画はおおむね順調に進行し,初期段階の結果を得ることができていると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,同様の手法を用いて,他疾患,多臓器への応用を試みる予定である.特に,脳腫瘍の鑑別診断や治療効果判定には有用である可能性が示唆されているため試行する価値は高いと思われる.また腫瘍以外の病態で組織構築が大きく変わる疾患,たとえば肝硬変の診断などへの応用も期待される.臨床的有用性を探る研究を進めるとともに,再現性の検討やより簡便な撮像法を模索する基礎的な検討も行う予定である.特に臨床応用の際には,撮像時間が長くかかることは障害となる.より短い撮像時間で同様の結果を得るため,パラメータの最適化,撮像の簡略化を精度を落とすことなく行う方法を模索する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基礎的検討を行うためにはファントム作成,ないしは専門業者への依頼などが必要となると考えている.専用ファントム開発となれば多額の資金が必要となる.予算内で作成可能かを業者と商談中である.国際的な認知度が得られてきたため,今後は欧州を含めた国際学会での発表の機会を増やす予定で次年度は旅費の支出が増えるであろう.また,データ数が膨大になってきたため今後は専門的な統計ソフトを使った解析が必要となる可能性がある.上記ファントム作成にかかる費用を見定めながら予算内に収まるように購入する機器のスペックを検討する.次年度への繰越金が生じた理由は,初年度に必要とされていたソフトウエアの購入を見送ったことによる.当面は研究員が個人的に所有していた旧バージョンのソフトウエアを使用し研究を続けている.
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Research Products
(4 results)