2011 Fiscal Year Research-status Report
マンナン添加超常磁性酸化鉄ナノ粒子を用いた動脈硬化診断法の確立
Project/Area Number |
23791407
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
大谷 秀司 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (70510270)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 微小超常磁性酸化鉄ナノ粒子 / MRI造影剤 / 動脈硬化 |
Research Abstract |
当初の計画では、(1)デキストラン被覆微小超常磁性酸化鉄ナノ粒子(USPIO)、(2)マンナンデキストラン被覆USPIO、(3)マンナン単独被覆USPIOを投与する3群の比較としていたが、(3)の作成に時間がかかったため、まず、(1)、(2)の2種類の粒子で比較を行った。(1)、(2)を渡辺遺伝性高脂血症ウサギに0.008、0.08、0.4、0.8mmol Fe/kgずつ投与(n=4)、投与後5日目で0.8mmol Fe/kg 投与群のみ、in vivo 造影MRAを行った。さらに対照群2羽(粒子非投与群)にも同様に造影MRAを行った。その後、ウサギを犠牲死させ、大動脈標本を摘出し、標本を50倍希釈のマグネビスト溶液に浸し、in vitro標本MRIを撮像した。それぞれの冠状断の異なる3断面で、3×20pixelの関心領域の信号雑音比SNRを3ヶ所ずつ測定、平均を算出した。投与群の標本で組織学的評価を行い、酸化鉄局在の確認にはベルリンブルー染色を、マクロファージ同定には免疫組織化学染色(RAM11)を施行し、200倍1視野における鉄染色陽性面積をImage J softwareにて解析、1標本につき3視野で測定し平均値を算出した。鉄染色陽性部位と免疫組織化学染色陽性部位を対比した。血管組織標本の鉄陽性面積は、(2)投与群は(1)投与群に比べ、いずれの投与量でも有意に多かった (p<0.05)。また、in vivo MRAでの血管壁のSNRは製剤投与後低下し、投与前後のSNRの差は(2)の差が大きく、有意傾向が見られた(p<0.1)。血管標本のSNRは、0.4、0.8mmol Fe/kg 投与群で(2)投与群の方が、値が低く有意傾向(P<0.1)が見られた。ただし、0.008、0.08mmol Fe/kg投与群では有意差は見られなかった。組織評価で鉄染色陽性部位及び、マクロファージ染色陽性部位はよく一致していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(3)マンナン単独被覆微小超常磁性酸化鉄ナノ粒子も作成されつつあるため、実験に必要な量が用意でき次第、今後(3)投与群の実験を進めることができる。(1)、(2)の製剤と同様のプロトコールを用いて実験、評価を行った後、3剤の製剤間で統計学的解析を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの経過より、マンナンを付加が製剤の動脈硬化病変への親和性を高める可能性が予想されるが、コーティング方法を変え、マンナンのみでのコーティングにすることにより、病変への移行がさらに高まる可能性が考えられる。(3)マンナン単独被覆微小超常磁性酸化鉄ナノ粒子も作成されつつあるため、実験に必要な量が用意でき次第、今後(3)投与群の実験を進める予定である。(1)、(2)の製剤と同様のプロトコールを用いて、実験、評価を行う予定である。全てのデータが揃い次第、3剤の製剤間で統計学的解析、t検定を行う。また、定量的評価として、全ての胸部大動脈標本サンプルのNMR測定を行い、鉄含有量を定量化する。予め、磁性ナノ粒子のT2緩和時間を測定し、粒子が取り込まれた一定重量の生体試料のT2緩和時間も測定。ブランクとして、粒子を投与しない同重量の生体試料もT2緩和時間を測定し、両緩和時間の差と、粒子の緩和時間の比から鉄量を求める。また、追加検討項目として、(1)~(3)の3製剤の培養細胞への取り込みも比較検討する予定。マウスマクロファージ培養細胞株(J774.1)を用いて、マルチクラスタープレートに同量の細胞を播種する。翌日、Fe量として10μgずつの3種の製剤が含まれた培地と交換し、1時間培養して製剤と反応させ、その後標準培地と交換、24時間さらに培養して、濃塩酸にて細胞溶解し溶解液中の鉄量を原子吸光法にて定量する。このようにして算出した細胞内鉄量も3種の製剤間で比較し、マクロファージ培養細胞への取り込まれ易さも比較検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
施行予定のマンナン単独被覆超常磁性酸化鉄粒子投与群の実験のため、マンナン単独被覆超常磁性酸化鉄ナノ製剤(28nm、15mg/ml)10ml(10万円)、WHHLウサギ16羽(5万円×16=80万円)、実験時鎮痛・鎮静処置のための麻酔薬(10万円程度)、追加実験用具(手袋、マスク、シーツ、シリンジ、針など、10万円程度)、NMR測定代金(10万円)、標本作成謝礼金(5万円)、培地・マルチクラスタープレート・ピペットなど(5万円程度)、画像解析用画像処理ソフトMetalab(1×380) (Mathwork社)(3万8千円)が必要である。また、全ての血管標本の定量的評価(NMR測定)のために、前処置に必要なテフロンホモジナイザー(1万5500円×48=74万4000円)が必要である。これに加えて、国内学会、国際学会での成果発表のための出張旅費は13万円程度、論文の印刷費用に2万円程度を予定している。
|