2011 Fiscal Year Research-status Report
前立腺がんの核医学診断を目的とした分子イメージングプローブの開発研究
Project/Area Number |
23791413
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 寛之 京都大学, 放射性同位元素総合センター, 助教 (50437240)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 放射性医薬品 / 造影剤 / 前立腺がん |
Research Abstract |
本研究の目的は、疾患の分子機構を標的として、病態生理学的観点と製剤学的観点からプローブ設計を行い、前立腺がんの核医学診断を目的としたPET・SPECT用分子イメージングプローブを設計・創製することにある。がんの核医学診断に広く用いられている[18F]FDGや[67Ga]クエン酸ガリウムは、前立腺がんの検出には適しておらず、確定診断は主に腫瘍マーカーを対象とした生検により行われている。しかし、生検は侵襲的であり患者への負担も大きいため、非侵襲的にリスク評価が可能な分子イメージングプローブの開発が望まれている。そこで本研究では、前立腺がんの細胞膜上に発現する特異的タンパク質であるProstate-specific membrane antigen(PSMA)を標的としたプローブ開発を行った。今年度は、[123I]を導入したSPECTプローブの開発を実施した。PSMAへの高い親和性と高い血漿中安定性を有するプローブ開発を目指して、[123I]IGLCEを設計した。in vitroにて、PSMAに対する親和性(Kd値)と、マウス血漿中での安定性を評価した。LNCaP担癌マウスを用いた体内動態評価を行い、SPECT/CT撮像を行った。[125I]IGLCEはPSMAに対して高い親和性を示した(Kd = 7.8±1.4 nM)。また、マウス血漿中で6時間まで安定に存在した。[125I]IGLCE はLNCaPに高い集積を認め、その集積は阻害剤の同時投与で有意に低下した。[123I]IGLCEは、SPECT/CT撮像でLNCaP腫瘍を明瞭に描出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度では、SPECT用プローブとして[123I]IGLCEを設計合成し、そのin vitro, in vivoでの評価を実施した。In vitroの評価より、[125I]IGLCEはPSMAに対して高い親和性を示した(Kd; 7.8±1.4 nM)。既報のプローブ([125I]DCIT, [125I]MIP-1095)でも同様に評価を行ったところ、[125I]IGLCEの方が高い親和性を示した(Kd: [125I]DCIT; 143±2 nM, [125I]MIP-1095; 20.4±0.6 nM)。このように、[125I]IGLCEは臨床試験に進んでいる[125I]MIP-1095よりも高い親和性を有しており、効果的なPSMAイメージングプローブとして機能する可能性が示唆された。更に、[125I]IGLCEはマウス血漿中で6時間インキュベートしても分解物を認めず、血漿中で安定であることが明らかとなった。In vivoの評価より、[125I]IGLCE はLNCaP(PSMA発現ヒト前立腺がん細胞)に集積性(30 min; 9.5±5.9 %ID/g)を示し、高い腫瘍血液比(30 min; 5.3±2.4)、腫瘍筋肉比(30 min; 11.1±5.8)を示した。LNCaPへの集積は過剰量の阻害剤投与によって阻害された(30 min; 0.55±0.05 %ID/g)。これらの結果は、[125I]IGLCEが生体内でPSMAを認識して結合・集積することを示しており、[125I]IGLCEがPSMAイメージングプローブとして機能することを示唆するものである。最後に、SPECT/CT撮像を実施したところ、[123I]IGLCEはLNCaPを明瞭に描出し、PSMAを標的とした前立腺がんイメージングに資する有望な候補化合物であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度に実施したSPECTプローブの開発に関しては、前立腺がんイメージングに資する有望な候補化合物である[123I]IGLCEの開発に成功した。この化合物は、既報のSPECTプローブよりも高い親和性を有しており、更にin vivoでも有効であることが示された。以上のことから、概ね計画通り順調に進んでいると考えている。H24年度は、開発したSPECTプローブの有効性の確認と、PETプローブの開発を実施する。具体的には、[123I]IGLCE を用いたSPECT/CT撮像の例数追加と簡易型急性毒性試験を実施する。更に、PETプローブの開発に関しては、18F、68Gaを導入したプローブの開発を進める。H23年度の研究成果を基に、PMSAと候補化合物の結合様式を、計算化学を用いて解析し、最適な構造になる様にPETプローブ候補化合物を設計する。化合物の合成に成功した場合、速やかにin vitro親和性評価を実施しイメージングに資する親和性を有しているか確認する。その後、in vivo評価を実施し、PSMAイメージングプローブとしての有効性を確認する。H23年度において既にin vitro, in vivoの評価系は構築済みのため、出来るだけ多くの候補化合物の評価を進めることを目標にする。今年度が最終のため、PET、SPECT両方において、それぞれ有望な化合物の創出を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度では、主に物品費(661512円)として、試薬、ガラス器具、細胞、動物などの購入を予定している。旅費(313730円)として、学会参加費、研究打ち合わせ、情報収集のための旅費などを予定している。その他(382560円)として、学会参加費、英文校正費、論文投稿費などを予定している。現在のところ計画通り進んでおり、研究計画の変更の予定は考えていない。
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Research Products
(2 results)