2013 Fiscal Year Research-status Report
医療用粒子線による放射化に対する高精度シミュレーション計算の開発
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23791419
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高階 正彰 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (10392010)
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Keywords | 核反応モデル / 放射化 / 粒子線治療 |
Research Abstract |
反対称化分子動力学(AMD)を用いて、量子分子動力学(QMD)を用いた従来の粒子線シミュレーションの計算の精度を向上できるかどうかの検証を行っている。昨年度までに、陽子線に関して計算を行い、AMDとQMDの精度が同程度であるとの結論を得たため、今年度は、粒子線治療において重要なもう一つのビームである炭素線に関する計算を行った。炭素を標的核として核子あたりの入射エネルギー100MeVと400MeV、酸素を標的核として核子あたりの入射エネルギー約8MeVの核反応をAMDとQMDで計算し、現存する実験データ(中性子、7Be, 11Cの生成断面積のみ)と比較した。その結果、現存するデータとの比較を行う限りにおいては、中性子生成断面積はAMDの方が若干良いものの、AMDとQMDは同程度の精度を持っているとの結論しか得ることができなかった。理論的な観点から言うと、より重い標的核ではAMDの有利性が強調されるはずであるので、40Ca を標的核とした核子あたりの入射エネルギー100MeVで計算を行った。その結果は、軽い破砕片の生成断面積ではAMDとQMDの結果は同様の傾向を示したが(中性子以外)、重い破砕片では顕著な違いが見られた。12C+40Ca の実験データは現在のところ存在していないため、12C, 16Oを標的とした反応も含めて、様々な入射エネルギー、様々な反応チャネルで系統的な研究が強く望まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
入手した計算コードと使用している大型計算機の相性が良くなく、並列化したプロセスのうちいくつかが途中で止まるという不具合が起きており、多くの手間を要する。原因や解決法を探したがまだ解決していない。計算を遂行することは可能であるが、計画からは遅れている。また、現存する実験データの中にはターゲットが厚く、単一エネルギーの核反応になっていないものもあり、どれくらいのエネルギーの幅を持っているかを評価し、利用可能かどうかを判別するのに多少の時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
炭素線の反応において、中性子生成断面積に関してはQMDよりもAMDの方が実験データをより再現している可能性があることを見出した。中性子発生のシミュレーションへの適用が可能であると考えている。 また、その他の生成核種の断面積に関しても、実験核物理グループに働きかけて、データ測定ができないかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計算が若干遅れているため、学生アルバイトに行ってもらっている数値データの解析も遅れている。行ってもらう予定だった分の残額が生じた。 学生アルバイトに数値データの解析を依頼する。
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